健康経営の導入事例山形市 様

“楽しむこと”が健康増進の鍵!山形市健康ポイント事業SUKSK(スクスク)

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取材日:2019年12月

取材日:2019年12月

企画担当者の写真

楽しく続ける仕組み満載のアプリ導入により、若年層の健康意識も向上!

「健康医療先進都市」を新規重要施策に掲げる山形市は、この実現に向けて、市民の健康に対する意識を高めることを目的に、S・食事、U・運動、K・休養、S・社会、K・禁煙の頭文字をキーワードとした「SUKSK(スクスク)生活」を提唱しています。この活動の一つとして、ウォーキングをはじめとする健康づくり活動への参加でポイントがたまり、記念品抽選に参加できるという健康ポイント事業が始まりました。

この事業の旗振り役となった佐藤孝弘市長と共にプログラムを推進する、佐藤久枝さん(健康増進課長)、市村昭一さん(同課 管理担当総括主幹(兼)課長補佐)、柴崎麻実さん(同課 課長補佐)、佐藤大地さん(同課 主任)にお話しをうかがいました。

山形市が掲げる「SUKSK(スクスク)生活」とは?

東北主要都市内でも人口一人当たりの診療所数が最も多く、市内にある山形大学では東北・北海道圏で初の次世代型医療用重粒子線照射装置施設の整備が進められているなど、医療環境に恵まれる山形市。

「健康医療先進都市」を掲げ、様々な健康に関する調査を行う中で市民が健康寿命を損なう原因を分析したところ、認知症・運動器疾患(骨折・転倒、関節疾患)・脳血管疾患で全体の80%を占めていたという実態がありました。

車社会であることから全国的に見ても平均歩数が低く、青年期・壮年期のBMIが高い傾向にあること、また、子どもの居る家でたばこを吸う人が想定していたより多い、がんの検診率が伸び悩んでいるという課題も見られました。

課長の佐藤久枝さんは、こうした課題に対して「山形市の地域柄、社会人になると多くの人が車で通勤し、意識しなければ生活の中で歩く機会がほぼないのが多くの市民の現状ということから、特に男性の働き世代のBMI値が高いというのは納得の結果でした」とコメントします。

また、健康課題解決のためにイベントなどを山形市でも開催してきましたが、「集まるのは高齢者層で、なかなか働き世代の参加が少ないといった現状もありました」と柴崎さんは健康無関心層へのアプローチの難しさをずっと痛感していたと話します。

こうした市民の実態に基づいた健康対策のキーワードに掲げられたのが「SUKSK(スクスク)生活」。食事(S)、運動(U)、休養(K)、社会(S)、禁煙(K)を重点テーマに置き、市民の健康のための取り組みを始めたのです。

市長が旗振り役になり始まった「健康ポイント事業」。

山形市が今回健康ポイント事業を始めるきっかけとなったのは、佐藤市長の後押しでした。

「健康改善を目的にするのではなく、ゲーム感覚を取り入れて、とにかく楽しんで続けられることを目的にしよう!健康づくりに取り組む人を増やそう!」というのが市長の方針。

最初は『健康ポイントって何?』というところからスタートしたと言う市村さんも「健康ポイント事業に対する市長の方針が明確だったので、皆が一致団結してポイント事業に取り組みやすかったですね。ゲーム感覚で健康づくりに取り組めるプログラムを調べ、既に取り組みを始めている自治体にもヒアリングを進めました」と振り返ります。

当初は、インセンティブというやり方に慣れていないということもあり、実際のところ、一時的な事業になりはしないかという不安もあったそうです。

「既に実施している自治体にも、そのあたりを入念に伺いましたが、ポイント付与によって参加しているという参画意識も出てきたり、健康のための意識が変わるきっかけにもなったりするので、ポイント事業は効果的と言う声をあちらこちらで聞き、自信をもって進めることができました」(佐藤久枝さん)。

他の自治体の事例を参考にしつつ、インターネットでも健康増進をサポートする事業者の検索をし、プログラムの選定を行ったそうです。

「最終的にはプロポーザルによってパートナー企業を選定したのですが、ここでも決定打となったのが、市長が打ち出していた“楽しく、気軽に取り組める”という視点や“なるべく多くの人が参加できる仕組み”という点でした」(市村さん)

「歩数に応じてコインが獲得できたり、バッジやスタンプをコレクションしたりする仕掛けもあり、何より気軽に操作できるドコモ・ヘルスケアのウォーキングをベースにしたアプリが一番楽しそうで長続きするのではと思いました。また、真面目過ぎず、ふざけ過ぎずというところが山形市民にも受け入れられそうだと直感しました」(柴崎さん)

アプリによる健康ポイント事業を導入することで、これまで参加を促すのが難しかった若年層による参加も期待が持てたと言います。

幅広い年齢層、様々な活動でポイントが取得できる仕組み

こうして、「SUKSK生活」に楽しく取り組んでもらうための健康ポイント事業のスタートが決まった山形市。
具体的には、アプリを登録、または歩数計、ポイント手帳を申し込み、スマホまたは歩数計でカウントされた歩数によってポイントが貯まります(例:1日8000歩以上で100p、5000~5999歩で50p等)。
歩数以外でも健康イベントやボランティア活動(1回500p)、市や職場等が実施する健診・検診受診(1受診500p)などの対象事業に参加することでもポイントの取得が可能に。

5000ポイント貯まったら、抽選に参加でき、山形のお米や山形牛、商品券などの記念品が当たるという内容です。

導入にあたり、頭を悩ませたのは、多くの方が参加できる仕組みづくりでした。
アプリで参加できるプログラムにより若年層の参加に期待を寄せる一方、スマートフォンの操作に不慣れな市民にも気軽に参加してもらえるよう、アナログで参加できるプログラムへの配慮も忘れません。

「なるべく多くの人に参加してもらうために様々な角度から思案した結果、システム的には複雑になってしまいました(苦笑)。アプリの開発、登録案内と共に、希望者には歩数計と記入式のポイント手帳を配布。そして、歩数や健(検)受診によるポイントだけでなく、健康づくりイベントやボランティア活動の参加でもポイントが付与される仕組みにもこだわりました」(柴崎さん)

「手軽という点では、アプリからは、記念品への抽選も都度自分で応募するのではなく、5000ポイント貯まったら自動的に抽選に参画でき、当選した際も登録された住所に自動で届くという仕掛けも参加のしやすさにつながったようです」(佐藤久枝さん)

また、参加者を増やすもう一つの工夫として力を入れたのは、一般の人だけでなく、市内にある企業にも参加を呼び掛けたこと。
市内50事業所ほどに声を掛け、今回23事業所がこの事業に参画していただきました。

「初めての試みだったので、企業の方の反応も伺いたく、アポを取って自ら足を運びました。今回は参画されなかった企業の方にもお話しをうかがうことで、大企業ほど福利厚生で実施するには各支店で不公平感なく行うことが鍵であるといった課題も分かり、今後の進め方の参考にもなりました」(佐藤大地さん)

さらに、これまでも山形市が長年養成してきた市民の運動・食事習慣の改善を指導する「運動普及推進スタッフ」や「食生活改善推進スタッフ」の皆さんが市民への周知やオープニングイベントなどに協力してくれたことも、大きな力になったと言います。

実施データから見えてきた市民の健康観

多くの市民の健康づくりをサポートしたいという思いで様々な参加方法を構築しスタートした結果、その甲斐あって、幅広い年齢層からたくさんの嬉しい声が届きました。

「歩数計で計測するのが今の生き甲斐になっているという90代の方がいらっしゃいました。これまでも自分の健康のために歩いていたけれども、90代で累計歩数が1位と表示され、すごく励みになり、とにかく楽しい!と言ってもらえました。また、70代後半の方がスマホを使いこなして健康づくりに取り組み“幸せ~”との投稿もありました。苦労はしましたが、色々検討してみて良かったと感じます」(柴崎さん)。


市がまとめた結果によると、開始2カ月ほどの参加者の内訳は、30~50代が多く、男女比についてはほぼ半々の比率ということが分かりました。
若年層の参加を狙って手軽に楽しみながら参加できるスマホアプリを導入したり、市内の保育園を利用する保護者に事業のチラシを配布したりし、課題として挙げられていたことを一つずつ丁寧に解決するべく担当者の皆さんが動いていったことが功を奏したようです。

「これまで市で開催する健康づくり事業への参加が少なかった若年層にも反応があり、嬉しく思いました。また、今まで年代別に1日の歩数データを取ったことがなかったのですが、集計してみると、60代が一番歩いていることも分かりました」(柴崎さん)

本事業では、楽しく歩いたり、イベントに参加したりという健康づくりと共に、アプリから市民の様々な健康データを得ることで次の対策が打てるのも魅力だと、佐藤久枝さんは言います。
「外部評価という位置づけで、大学などの力を借りて、データの分析をし、その結果に基づいた施策を全国に発信していこうと考えています」

健康ポイント事業を、健康課題の解決と生き甲斐を育むムーブメントに!

健康ポイント事業をスタートしてみると、市民の皆さんが楽しんで参加しているとの声と共に、「もっとこういう機能を付けて欲しい」、「健康先進医療都市として、もっと突き抜けたことを事業化して欲しい」など、早速次への期待が寄せられています。

「いただいた声を受け、只今、健康増進課ではアクティブ率を上げるための第2弾も考案中です。設定したウォーキングコースを使ってポイントを獲得できるようにしたり、参加者の写真コンテストを開催したり、参加事業所や健康づくり対象事業を増やしたりなど…。
ただ、ポイント対象事業を多くし過ぎると歩かなくてもイベントやセミナー参加でポイントが貯まることになるのが難しいところ。やはり、歩く習慣をつけてもらうことが、山形市民の健康課題解決策として大事になるので、そのベースは崩さないようバランスを上手くとっていきたいです」(柴崎さん)

そして、本事業は、市民の健康課題解決を主にした「SUKSK生活の推進」の中の目玉事業。「SUKSK、私も参加しているよ!」と日頃の話題に上がるように育てていきたいと皆で声を揃えます。

「ここまで予算を付けて健康づくりのための新事業を行うのは初めてでした。市民の方に楽しんでもらって還元できる仕組みが良いと考えています。楽しみながら健康づくり意識の向上をはかり、今後も市民のムーブメントとして盛り上がりを見せてくれたらうれしいです」(佐藤久枝さん)

最終的に市長から挙げられている最終的な目標は、人口の1割が参加すること。
「同様の健康ポイント事業を2014年に開始した横浜市では、昨年度参加者が人口の1割に達したとの報告を受けているので、そうした事例を参考に、今後5年くらいを目途に達成したいと考えています」(柴崎さん)

市村さんは「市民の皆さんの参加データの集積で、健康、行動パターンの経年変化を見られるということは、今後も本事業は健康増進課としては大きな収穫になります。そうした期待が寄せられながらも、何はともあれ、健康ポイント事業への参加によって、“生き甲斐ができた”、“夢を持てた”と感じた人が居るのが一番良かった」と本音を語ってくれました。

まとめ

「健康改善だけが目的ではなく、楽しんでやれることから健康づくりを始めよう!」という市長の強い思いと、健康増進課ご担当者が自らの足で動いて参加者を集め、市民が楽しんで健康になる姿を一緒に喜び事業に取り組むチームワークの良さ。一人でも多くの人に参加して欲しいという参加者の利便性を第一に追求した結果が、多くの市民に愛される健康ポイント事業の好スタートにつながったのでしょう。こうした山形市の取り組みに、今後ますます期待と注目が集まりそうです