健康経営の導入事例全日本空輸株式会社 様

職種やシフト形態が異なる職場でも知識を得ることで、健康に対する行動も変わる!

導入サービス

  • 女性の健康向上パッケージ

取材日:2019年10月

取材日:2019年10月

企画担当者の写真

女性ならではの健康課題を共有し、「ヘルスリテラシー」を高めることでパフォーマンス向上にも期待

ANAグループは「健康経営宣言」のもと、社員・会社・健康保険組合が一体となって、健康で長く働くことのできる環境の整備に向けて、積極的に取り組んでいます。
その一環として、グループ各社を横断して運営する「健康経営事務局」では、これまでも力を入れてきた「女性の健康」に着目。職種や年齢層問わず、より多くの女性社員に理解、共感してもらえるよう、ドコモ・ヘルスケアが提供する「女性のライフステージと健康&キャリア」を網羅するセミナーを2019年9月に実施しました。
セミナー終了後、参加者の約9割は、本セミナーの狙いでもあった、「働く女性として健康に対して何等か行動を変えてみよう」という認識を持ち、「行動変容」のきっかけになったようです。

健康経営事務局運営の中心となる脇本さん(人財戦略室 労政部厚生チーム マネジャー)、松本さん(人財戦略室 労政部厚生チーム シニアコーディネーター )にお話しを伺いました。

年齢層や勤務形態も様々な職場があるからこそ「健康課題を絞る難しさ」があった

多くの女性社員が働くANAグループでは、女性の健康増進により一層取り組んでいくと共に、全社員が心身共に健康でいきいきと働ける環境づくりを目指しています。
2018年には女性の健康に着目し、「ヘルスリテラシーの向上」と「環境整備」に地域や組織全体で取り組む『ウィメンズ・ヘルス・アクション』を宣言。社員が気軽に立ち寄れる「保健室」の開設や妊活セミナーの開催、ピンクリボン月間には全女性社員へ乳がんのセルフチェックキットの配布や乳がんセミナーを開催するなど健康増進意識の向上を図ってきました。

「これまでも、女性を対象にした取り組みは行ってきましたが、女性が多い会社としてまだ取り組みが足りていないという課題認識がありました」と脇本さんは語ります。

女性の健康課題は、乳がんや子宮・卵巣のトラブルなど疾患として現れるもののほか、PMS(月経前症候群)や月経困難症、不妊や更年期症状など、どこからが病気?と女性自身の認識もあいまいな不調も多く、仕事に支障が生じる場合でもなかなか声に出しにくいという傾向があります。

女性の活躍を推し進めるなかで年齢層の幅が広がったことから、月経随伴症状、妊活、更年期障害の悩みやシフト勤務者の体内リズムなど耳に入ってくる健康課題は様々。女性の健康課題について何かやらねばと思っても、どこに焦点を当ててやっていくのかという難しさがありました」

「女性のライフステージとキャリアプラン」を重ねる内容が決め手に

女性の健康課題を取り組もうという理解は社内でも広がる一方、様々な年代や勤務体系の女性がいるという職場において、全社的にどういった健康課題を取り上げるのが良いのか―。

こうした課題がある中、社員と家族の健康増進を目指す『KENKO企業会』で、ドコモ・ヘルスケアによる“女性のライフステージとキャリアプラン”の両輪を考えた取り組み事例発表を聞き、「なるほど!」と目からウロコだったと言う脇本さん。

「ライフステージ別に起こる健康課題の解決法やキャリアプランを考えようという内容であれば、どのライフステージの人が参加しても将来の心構えになったり、かつての自分の状態を振り返ることになったりする。これなら多くの社員の興味関心を引き、自分事化してもらえると確信しました」

こうして、健康経営事務局ではドコモ・ヘルスケアが提案する産婦人科医による「女性のライフステージとキャリアプラン」のセミナーとヘルスケアコラムを提供する「女性の健康パッケージプラン」の導入を進めることにしました。

そして、次なる課題は、ANAグループ全体で実施するにあたっての社内的な運営方法でした。

「女性の健康課題に関する取り組みを実施することについて、反対意見は全く上がらず、上司の理解もあったことからスムーズに決定しました。ですので、まずはヘルスリテラシーを上げる目的で開催するセミナーから多くの人が享受できるためには、何をすべきかに焦点をあて事を進めることにしました」(松本さん)

各地の拠点は、北は北海道から南は沖縄まで、そして海外へと広がるANAグループ。拠点が多いため、インターネットのコミュニケーションサービスを導入し、各地でセミナー中継を行うことに。
各地に音声や画像が上手く届けられるよう、何度も予行演習を重ねたそうです。

「せっかく著名な産婦人科医宋美玄先生が講演されるので、各地で活躍する忙しいスタッフ達にもより多く集まって話しを聞いてもらいたい。どうしたらより分かりやすく伝わるかを考え、音声や撮影アングルなどにもこだわりました。また、開催時間の設定も悩ましいところでした」(脇本さん)

最も悩んだという開催時間は、より多くの社員に参加してもらえるよう、日勤部門が多い汐留本社とシフト勤務が多い羽田空港で2回開催。

汐留本社ではランチタイムに実施し、お昼ご飯を食べながら先生のお話しを聞けるようにしたところ、社員からも好評でした。
羽田空港ではシフトによっては勤務後でも参加できる15時30分から開催。

それらの工夫も功を奏し、任意で参加申し込み制にしたものの、全国で130名程のスタッフが参加。期待値が高く、これまで開催したどの社内セミナーより反響が良かったと評価を受けました。

セミナー内容の質問や相談コメントから、女性同士の共感が拡がった

参加者の年齢層は、開催地により異なることも予測されていましたが、蓋を開けてみると、いずれも狙い通り20~50代まで様々。

講演内容は、まず女性と男性の体の違いやライフステージ別の心身の状態への理解を促し、身体の状態を置き去りにしないキャリアプランの考え方、女性特有の病気や不調の原因と対策など多岐にわたり、働く女性として身に着けておきたい知識と実践的な対策法を学びました。

今回のセミナーで工夫したもう一つの点は、講師への質問方法。自身の健康状態にまつわることは公の場では質問がしにくいことに配慮し、セミナーを聞きながら、その場で匿名で質問を送信できるチャット形式を取り入れました。

「質問はセミナー中、リアルタイムで受け付けていたのですが、最初は先生のお話しに集中していたようで誰からもメッセージが無く…。でも、終わりに近づくに連れて増え、誰かの質問に先生が答えたことに対してまた質問が来たりし、最後は事務局でピックアップする余裕がないほど寄せられました」(松本さん)

質問内容は、シフト勤務者から規則正しい生活が難しい中でどうPMSのケアをするといいのかという切実な現状の課題や、女性特有の持病のこと、妊活のこと、更年期症状のことなど多岐にわたり、中には個別の相談内容に及ぶコメントも多々あったそうです。

「途中から個人的なカウンセリングのような内容が寄せられ、やや心配になったのですが、チャットやアンケートで『私と同じような悩みを持つ人がいることに安心した』『身体のことで悩んでいるのは私だけじゃないと思えて良かった』という声も多々上がり、参加者の声が参加者の励みになったという思いがけない反響にも驚きました」(脇本さん)

それだけ多くの質問やコメントが寄せられたことから、「女性のライフステージとキャリア」という内容が参加者それぞれの“自分事”として胸に刺さったと言えそうです。

セミナー参加者の9割が「知識を得たことで行動を変える」と回答

プロジェクトのもう一つの狙いは、このセミナーを受けたことにより、何かしら自分の行動を見直そう、変えようという行動変容の認識を持ってもらうこと。

もちろん、『知らなかった、勉強になった』という感想だけでもいい。さらに、情報を知るだけでなく、その中から“自分に必要な情報を選択”し、“行動に移す”というところまで引き上がるとなお嬉しいと、期待を寄せていたそうです。

セミナー後のアンケートでは、このセミナーをきっかけに、なんと約9割の人が「行動を変えてみようと思った」と回答。
「これは嬉しい結果でした。これをきっかけに『病院に行ってみよう』ということにつながれば嬉しいですし、『ちょっと隣の人にこの知識を話してみよう』というのでもいいんです。何かしらその人にとって変化があるといいなと願っていたので」と、脇本さんはその手応えを語ってくれました。

そして、大きな収穫としては、チャット形式にしたことで質問やコメントが多数集まったこと。
「皆が何に悩んでいるかということが明確になり、この声を聞いて、我々が次に何をすべきかを考える材料にもなりました」(松本さん)

最新のヘルスリテラシーを身に着けることは、仕事のパフォーマンス向上にもなる

また、今回大きな反響があった内容が、仕事にも支障が出るような月経随伴症状も更年期症状も実は自分でコントロールできるということ。

「女性ホルモン剤を上手に使うことが、まさか仕事のパフォーマンスにつながるなんて、全く思いもしなかったという意見は多かったですね。私自身もピルは副作用もあるから極力飲まない方がいいなど、昔得た知識が邪魔していたことがあり、目からウロコでした。」(松本さん)

脇本さん自身も、先生がピルの活用を推奨していた内容に驚いたと言います。
「そもそもの生理の概念が覆されたようでした。子どもを産むための準備が生理。だから、その準備が今いらないのなら、ピルを服用して止めておいても何ら問題がなく、むしろ、いざ子どもを産む時に体の状態がよくなることにつながるとは、全く知りませんでした。生理を止める=体に負担をかけると認識していたので、もっと早く知りたかったと思ったほどです」

「そして、今回の内容は、知っていれば備えられるという情報がたくさんありました。例えば子どもを産む回数が少なくなった現代の女性は、昔の人に比べると、何倍も多く生理を経験する。そう言われればそうだと思いますが、そのことが結果、子宮や卵巣に負担をかけ、体の不調や疾患につながりやすいということなど。だからこそ、体に配慮しなくてはいけない。ヘルスリテラシーを高めることは、自分の体をいたわり、結果仕事のパフォーマンス向上につながることを共有できました」

今後は女性だけでなく、男性にも女性の健康課題の理解を促す施策を

今回の取り組みの評価として、脇本さんはグループを上げて女性の健康を打ち出したことはなかったので、全社的に女性の健康を考える良いきっかけになったと言います。

「これからも女性の健康を考える取り組みが必要であることは間違いのないこと。今回はまず女性のライフステージを切り口に全般的な内容を学ぶ形式にしましたが、今後はアンケートや職場の反応を見ながら、より具体的に深堀すべき内容は何か、どれくらいの頻度で取り組むといいかなど、その優先順位を考えながら継続的に取り組んでいきたいと考えています」

松本さんは、女性だけでなく男性にも女性の健康課題を共有していく方策を検討していきたいと話します。
「今回、男性にもセミナー告知をしましたが、男性参加者は10名ほど。セミナーアンケートでは約30%が男性にも今回のようなセミナーを聞いて欲しいと答えていました。今後は、なかなか一歩を踏み出せないという男性が参加しやすいセミナーの開催方法を考えていきたいです」

「そして、健康に興味のある人だけでなく、現時点で健康に関心がない人にこそ、仕事のパフォーマンスを上げるひとつとして健康を考えてもらえるといいですね。健康増進に向けた取り組みは、どの課題をピックアップし、取り組んでいくかが難しいところ。こうした点について、全国にある健康管理センターや健保からの情報や各社にいるウェルネスリーダーからのニーズをキャッチアップすることで社員の健康経営に向けたニーズを今後も絶えず探っていきたいと思います」と、脇本さん、松本さん共に笑顔で語ってくれました。

まとめ

第一線で活躍する女性が多いANAグループ。グループを横断してチームを組んだ健康経営事務局が主体となって課題に取り組み、社員の健康ニーズのキャッチアップやリサーチを絶えず丁寧に続けていることがその力になっているといえるでしょう。今後も健康経営のトップランナー企業として、女性特有の健康課題の取り組みが注目されそうです。