働き方改革

2018/08/28

労働生産性の計算方法とは?日本の労働生産性はなぜ低い?向上させるには?

労働生産性とは、労働者1人当たりが生み出す成果を示す指標です。今回は、労働生産性の経済指標としての意味と、日本の労働生産性を低下させている課題を整理し、労働生産性を向上させるための方向性を探ります。

世界の中で労働生産性が低いとされる日本。その結果は、OECDの調査でも明らかになっています。
そして、日本政府もこの状況を打破すべく、「働き方改革」を打ち出しています。
しかし、なぜ日本の労働生産性は低いのでしょうか。
今回は、労働生産性の経済指標としての意味と労働生産性を低下させている課題を整理し、どうすれば労働生産性を向上させることができるのか、その方向性を探っていきます。

労働生産性の計算方法とは?

そもそも、労働生産性はどのように算出されるのでしょうか。
実は、労働生産性と一言でいっても、産出する成果をどのように捉えるかで指標も変わります。
まず、基本的な労働生産性は以下の式で表現することができます。

労働生産性=「産出(労働の成果)」/「労働量(投入量)」

分子にあたる産出は、「労働者1人あたりが生み出す成果」もしくは、「労働者が1時間で生み出す成果」になります。
また、分母にあたる労働量は、従業員数や時間あたりの労働量になります。
この式から、労働生産性の数値を良くするには、産出する労働の成果を増やすか、投入する労働量を減らすかになります。
これが、労働生産性の基本的な考え方になります。

また、先ほどお伝えしたように、産出する成果によって適用する指標が異なります。それは、大きく分けて、以下の2種類になります。

・物的労働生産性 = 産出量/労働量
・付加価値労働生産性 = 付加価値額/労働量


物的労働生産性は、産出量を「商品の生産量」や「販売金額」にした場合の指標です。
一方、付加価値労働生産性は、以下の計算式によって算出される付加価値額を分子にして計算したときに求める指標です。

・付加価値額 = 営業利益+人件費+減価償却費

このように、労働生産性と一口に言っても2種類存在するのです。この両者の違いを正しく理解することが、労働生産性への理解を深める第一歩になります。

日本の労働生産性は低いのか?

それでは、日本の労働生産性は実際どのようになっているのでしょうか。
先ほどお伝えしたとおり、労働生産性は生産量や販売量を産出とみなした物的労働生産性と、付加価値を産出とした付加価値労働生産性の2種類があります。

労働生産性を国際比較する際は、後者の付加価値労働生産性を用いて行います。
各国の付加価値とは、すなわちGDP(国内総生産)のことです。
さらに、GDPを国内の労働量で割ると国の付加価値労働生産性が算出されます。
すなわち、以下の式で表すことができます。

・労働生産性=GDP/就業者数または(就業者数×労働時間)

なお、この式は「一人あたりのGDP」と同様になります。すなわち、一人あたりのGDPの国際順位が労働生産性の世界ランキングになるのです。
2017年のOECD加盟国における「一人あたりのGDP(国民経済性)」によると、日本は36カ国中21位になっています。

※出典:日本生産性本部「労働生産性の国際比較 2018」より

さらに、先進7カ国では統計でさかのぼれる1970年以来最下位が続いています。
日本の労働生産性が低いと言われているのは、これが理由です。

しかし、この数値も完璧なものとは言い切れません。
まず、肝心なGDPですが、国ごとに算出方法が異なります。
また、一人あたりのGDPはあくまで平均値であるため、格差などを反映していないという指摘もあります。
また、失業者の存在も加味されていません。

また、労働生産性は業種によっても大きく異なります。
一般的に、製造業や不動産業は労働生産性が高いと言われています。
一方で、サービス業は労働生産性が低くなる傾向があります。
今後、日本でサービス業の比率が増えると、労働生産性はますます下がる可能性があるでしょう。

労働生産性を低下させる要因

日本の労働生産性の低さは、GDPの算出方法や業態の割合よるところもあると考えられますが、働き方や労働者を取り巻く環境も大きく影響しているのも事実です。
ここでは、2つの観点から、日本の労働生産性を低下させる要因について考えてみます。

働き方の非効率さが労働生産性を低下させている

特に、日本の労働環境は非効率的な部分があります。
大企業になるほど縦割り組織になり、調整に手間取ることで業務が遅々として進まないことという弊害もあります。
物事ひとつ進めるのも、根回しをしたり、稟議を多くの人に回す必要があります。
これも生産性を低下させる原因です。

社内コミュニケーションも非効率な面が目立ちます。
必要のない会議などにより、各従業員が思うように業務を進められないという弊害も生じています。
また、パワハラ不必要な残業なども労働生産性を下げる大きな要因になっているでしょう。日本企業にある非合理的な習慣が、日本の労働生産性の低さの原因になっているのです。

また、会社へ出社するまでの通勤時間も問題です。
電車で勤務している方であれば、会社まで1時間半から2時間通勤という方も多いのではないでしょうか。
また、車の通勤の方であれば、出社時の渋滞も大きな問題になっているはずです。

通勤時間があるため、その分睡眠時間が削られて、疲労の回復もままならないというケースもあるでしょう。
また、満員電車のストレスも非常に大きいです。
朝からこの状態では、出社したころにはかなりエネルギーが削られているはずです。
これにより、日中の業務の効率性が上がらないという問題もあるでしょう。

プレゼンティーイズムが労働生産性低下の大きな要因に

もう一つ、非常に大きな問題としてプレゼンティーイズムの問題があります。
プレゼンティーイズムとは、社員が出社しているにもかかわらず、労働生産性が著しく低いため業務に支障が出ている状態をいいます。

プレゼンティーイズムを理解するには、それと比較されるアブセンティーイズムについて理解を深めるといいでしょう。
アブセンティーイズムは、心身に支障が生じて、会社に出社できないことをいいます。
うつ病などになって、出社できないというのは、まさにこのケースです。

アブセンティーイズムも企業にとって大きな問題ですが、目に見えてわかるため、対応することが可能です。
社員に対して休養を勧めたり、職場復帰が不可能と分かれば代わりの人材を採用することができます。

しかし、プレゼンティーイズムはそうはいきません。
問題を抱えている社員は他の社員と同様に出社しているため、はたから見ると何も問題がないように感じます。
それゆえ、対処するのが難しく、大きな問題になっているということもあるのです。

プレゼンティーイズムは企業にどのような影響を与えているでしょうか。
米国では 10 年ほど前からプレゼンティーイズムの研究が始まっており、年間の経済損失は1500 億ドル(約 16.7 兆円)とも言われています。
日本の場合、一般的に多少無理をしても休まないことを美徳する文化や、遅くまで残業をするのは頑張っていると見られるという意識があると言われます。

日本でのプレゼンティーイズムによる影響の試算は研究によってさまざまですが、その経済損失は国内全体でアブセンティーイズムの 460 億円 の100 倍、4兆3千億円以上とも見られています。

また、金額だけでなく、従業員のパフォーマンス、すなわち労働生産性にも大きな影響があると言われています。
健康日本21フォーラムが2013年に行った「疾病・症状が仕事の生産性等に与える影響に関する調査」によると、メンタル不調に陥ると業務遂行能力は6割以下になるという結果が出ています。
また、心臓や月経不順、偏頭痛・慢性頭痛などによって、業務遂行能力は7割未満になるといいます。

もし、企業でプレゼンティーイズムが蔓延していたら、単純に考えるとその企業の業務遂行能力は6〜7割ほどになってしまうことになります。
こうなってしまうと、労働生産性が低くなるのも無理はありません。
プレゼンティーイズムは、日本企業にとって無視できない問題なのです。

労働生産性を向上させるには?

働き方やプレゼンティーイズムの問題から、日本企業の労働生産性が低いことはある程度理解できたのではないでしょうか。

しかし、労働生産性が低いことは、企業にとっては大きな課題です。
どのようにすれば、これを解決できるのでしょうか。
ここでは、3つの方法について考えてみたいと思います。

労働生産性を向上するツールの活用が有効

まず、考えたいのがコミュニケーションツールやグループウェアなどのタスク管理ツールの活用です。
IT技術が進化するのに伴い、アプリケーションなども急激に進化しています。
たとえば、ITを用いたコミュニケーションといえば、これまでメールが主な手段でした。

しかし、近年はチャットツールが頻繁に用いられるようになってきました。
プライベートでは既に、チャットツールで、コミュニケーションを取っている人が増えていますが、ビジネスシーンでもさまざまなチャットツールが登場しています。

メールのような堅苦しさはなく、より気軽にコミュニケーションを取れるのが最大のメリット。
一度使い始めると、おそらくメールでやり取りするのが面倒になるでしょう。

このように、社内のやりとりをメールからチャットツールに変えるだけでも、労働生産性は大きく向上するはずです。

また、従業員のスケジュールなどを管理できるグループウェアの活用も検討したいところです。
最近では、チームで行うタスクの管理もできるようになっており、ますます便利になっています。
プロジェクトの進捗など、グループウェアを見れば一目瞭然となれば、それにかかっていた報告業務も不要になります。

また、各々の業界で最新のシステムや機械を導入して、生産性を向上させることも可能でしょう。
小売店では、最新のPOSレジシステムを活用することで、接客時間が大幅に短縮されたという事例もあります。
また、製造業であれば、助成金などを活用して最新の機器を導入しても良いかもしれません。

これからITはますます進化します。その恩恵を享受して、自社の労働生産性を向上させることは、今後ますます重要なことになるでしょう。

働き方改革やオフィス環境の変化が労働生産性に貢献

また、働く環境についても考えてみたいところです。
最近、徐々に増えてきましたが、勤務体系をフレックスタイム制にしたり、リモートワークを承認するなども労働生産性の向上をもたらしてくれるでしょう。

特に、リモートワークは通勤にかける時間や労力が不要になります。
したがって、その分効果的に仕事を進めることができるでしょう。
精神的な負担も軽減されるため、プレゼンティーイズムのリスクも軽減されるはずです。

社内のIT化を進めれば、あらゆる仕事がリモートワークで対応できることがわかるでしょう。ここでも、業務のIT化がキーポイントになります。

また、社内コミュニケーションをより円滑にするために、席をフリーアドレスにしたり、プロジェクト表彰など社内イベントを設けるのも良いでしょう。
フリーアドレスにすることで、近くにいる人が毎日のように変わり、刺激を受けることができるはずです。
また、プロジェクト表彰などを行えば、良い意味で競争意識も出て、より業務に打ち込めるようになるでしょう。

このように、従業員がより働きやすい環境を整えるのも、労働生産性をアップさせる策になるのです。

従業員の健康状態を良好に保つことが労働生産性向上につながる

そして、もっとも重要なのは従業員の健康状態を良好に保つことです。
先ほどのプレゼンティーイズムの例にあるように、心身に支障をきたしていると労働生産性の低下を招きます。
これを回避するためにも、従業員の健康管理が重要なアクションとなります。


プレゼンティーイズムのような事態を防ぐには、普段から継続的に管理することが求められます。
なにより、従業員の健康状態を良好に保つ企業の取り組みが重要です。
経済産業省の『企業の「健康経営」ガイドブック』では次のような取り組みを推奨しています。

まずは、従業員の健康課題を予め把握しておくことが大事です。
従業員の健康の状況の把握方法として、定期健康診断、特定健診、任意健診、メンタルヘルスチェック等がありますが、さらに定期健診受診率、保健指導対象率、保健指導実施率 などをデータ管理して従業員が健康を保つための行動管理も大切です。

定期的にアンケートなどを行い、精神状態や労働負荷を把握することも有効です。また、従業員のヘルスリテラシーを高めるアクションも重要となりますので、社内で定期的に健康セミナーを開催するのがいいでしょう。従業員との日頃からの健康に関するコミュニケーションが大事です。

生活習慣病やメンタルヘルスなどの予防につながる取り組みとしてヘルスリテラシーの向上、ウォーキングイベント、社食における健康メニューの提供、禁煙プログラムの提供や運動奨励などのポピュレーションアプローチは重要な取り組みとなります。

また、生活習慣病等の高リスク者に対して疾病予防・重症化予防をハイリスク・アプローチの取り組みも有効です。
保健指導や管理不良者に対して、再検査や受診勧奨をなどの施策を行います。

まとめ

ここまで、労働生産性の考え方や日本の労働生産性が低い要因、それに対する対策などを紹介してきました。
労働生産性は、企業の問題でもあり、会社全体の大きな課題でもあります。働きやすい環境を整えることで、企業の労働生産性は大きく向上し、日本の生産性向上にも大きく寄与することでしょう。

また、その中でも特に気をつけたいのが従業員の健康です。
労働生産性を低下させる要因としてプレゼンティーイズムの考え方が生まれ、その影響が明らかになりつつあります。

労働生産性の改善には「効率化ツールの導入」や「オフィス環境の改善」も解決策のひとつですが、企業の従業員の健康状を良好に保つことが、本質的で効果的な改善と考えられます。「健康経営」の実践にもつながるかと思いますので、今日から早速試してみてはいかがでしょうか。

編集部

ヘルスケア通信の編集部

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