健康経営

2018/08/16

プレゼンティーイズムとは?社員の病気・不調が生産性に与える影響とその対策方法

プレゼンティーイズムとは、「出勤はしているものの、健康上の問題で労働に支障をきたし、最善の業務ができなくなる状態」のことをいいます。健康経営を進める上で、今後プレゼンティーイズムへの対応が不可欠になります。ここでは、プレゼンティーイズムに関する正しい知識と対処方法についてお伝えします。

プレゼンティーイズムとは、「出勤はしているものの、健康上の問題で労働に支障をきたし、最善の業務ができなくなる状態」のことをいいます。
一見すると、出社して普通に仕事をしているように見えてしまいますが、企業の生産性という観点では、たびたび欠勤を繰り返す状態のアブセンティーイズムよりも影響が大きいという説もあります。
健康経営を進める上で、今後プレゼンティーイズムへの対応が不可欠になります。
ここでは、プレゼンティーイズムに関する正しい知識と対処方法についてお伝えします。

プレゼンティーイズムの定義とその意味

まず、プレゼンティーイズムとはどういう状態を表すのか。アブセンティーイズムと比較しながらみていきます。

アブセンティーイズムは、社員が病気や体調不良のため、たびたび欠勤することをいいます。
このような状態になると、当然業務にも支障をきたしているのが明らかになります。

いっぽうで状況が目に見えてわかるため、問題の対処は進めやすいともいえます。
欠勤を繰り返す社員には休養を促す。
職場復帰が難しい場合には、代わりの社員を充当するなどの対応が可能です。

プレゼンティーイズムの場合、社員の状態は、アブセンティーイズムのように、病気や体調不良のため心身に不調が起きているケースがほとんどです。
プレゼンティーイズムに陥っている社員はそれでも出社をしますし、問題なく業務をこなしているようにも見えます。

これが、アブセンティーイズムとは大きく異なる点です。
実際は出社しているものの、心身に支障をきたしているため、仕事のパフォーマンスは上がらず、結果として働くことが難しくなっているのです。
目に見えづらく、アブセンティーイズムのように管理するのも対応するのも困難です。

プレゼンティーイズムは、”absenteeism”と”present”を組み合わせてできた造語です。
プレゼンティーイズムはアブセンティーイズムの後にできた言葉であり、比較的新しい概念とも言えます。
どちらも「疾病就業」と日本語に訳されますが、両者の実態は大きく異なります。

プレゼンティーイズムによる生産性はどれくらい低下するか

それでは、プレゼンティーイズムは企業の生産性にどれくらい影響を与えているのでしょうか。

たとえば、米国ではプレゼンティーイズムによる損失が年間約150万ドルという調査結果が出ています。
これだけの損失がプレゼンティーイズムによって発生しており、しかもアブセンティーイズムの3倍以上に及ぶといわれています。
プレゼンティーイズムへの対応は、米国企業にとって喫緊の課題ともいえるでしょう。

しかし、日本は米国以上にプレゼンティーイズムの問題が根深いという説もあります
。 勤勉を美徳と考える日本では、体調や精神に支障をきたしても出社するような傾向が高いと言われているためです。

実際、プレゼンティーイズムは日本企業にどのような影響を与えているのでしょうか。
健康日本21フォーラムでは2013年に「疾患・症状が仕事の生産性等に与える影響に関する調査」を実施しています。

アンケートを行う前の2週間以内に健康上問題が発生した20~69歳の男女2,400人に対して、健康時の業務遂行能力を100点とした場合、心身に不調があるときに何点になるかについて聞いています。

結果は、メンタル不調時には、56.5点しかないことが明らかとなり、健康時より生産性がおよそ半分になってしまうことがわかりました。
また、心臓に不調があるときは63.0点、月経不順などによる不調は63.8点、偏頭痛・慢性頭痛の際は67.9点と6~7割ほどの生産性に落ちてしまうことが判明しました。

このように、プレゼンティーイズムは企業の生産性に大きな影響を与えます。
そして、プレゼンティーイズムによる逸失利益は「従業員1,000人、年間平均就業日数200日の企業では、メンタルヘルスの不調により約5人の離職に等しい逸失利益があると想定」と試算されています。

プレゼンティーイズムの原因となる健康上の問題とは

ここでは、プレゼンティーイズムの原因を詳細に見ていきましょう。

プレゼンティーイズムの原因となる様々な疾病や症状

まずは、プレゼンティーイズムの原因の上位に挙げられた疾病や症状を紹介します。

1. メンタル面の不調
不安感や不眠、イライラ、人間関係に起因するストレスなどは、仕事の生産性に最もネガティブな影響を与えます
同調査では、メンタル不調によってモチベーションや集中力といった個人的な問題だけでなく、計画・予定に対する結果や顧客・同僚のコミュニケーションなど対外的なことまで、あらゆる面で影響を与えるとしています。

2. 心臓の不調
不整脈、狭心症など心臓の不調も生産性に大きな影響を与えます。
心臓の不調は、集中力やモチベーションの低下につながりやすいという結果も出ており、注意が必要です。
心臓に不調が原因とみられる心理面の変化としては「毎日の生活に充実感がない」「これまで楽しんでいたことが楽しめなくなった」といった兆候があると言われます

3. 月経不順、PMS(月経前症候群)などによる不調
女性の場合、避けることができないのが月経、これにより、プレゼンティーイズムに陥ることもあるようです。
特に、月経不順やPMSなどによる不調では「自分が役に立つ人間だと思えない」と自己否定してしまう傾向が見られることもあります
身体だけでなく、精神面でもケアが必要といえるでしょう。

4. 偏頭痛、慢性頭痛
頭痛を持病にしているという方も多いのではないでしょうか。
特に、顕著なのが頭痛による集中力の低下です。
これも、プレゼンティーイズムの要因となりうるので、注意したいところです。

5. その他の要因
また同調査では、以下の症状もプレゼンティーイズムの要因になると取り上げています。いずれの症状も、生産性を7割前後まで落としてしまうという調査結果が出ています。

胃腸の不調、呼吸器の不調
目の不調(眼精疲労、ドライアイ、緑内障など)
首や肩のコリ
腰痛
花粉症などのアレルギー性鼻炎(季節性・通年性)
糖尿病
風邪(ひきやすく、なかなか治らない)
二日酔い


二日酔いのように、すぐに対処可能なものもありますが、ほとんどの症状は慢性的になりうる症状です。
個人による健康管理だけでなく、企業も従業員の健康管理を徹底することが求められるようになってきているのです。

睡眠の質の低下がプレゼンティーイズムを引き起こす

これまでにあげた様々な疾病や症状に加えて、プレゼンティーイズムを引き起こす大きな原因としてあげられるのは、睡眠の質の低下です

厚労省の睡眠指針にもある通り、睡眠の質の低下や睡眠不足は労働生産性を下げます。
特に働く世代は、必要な睡眠時間が確保しにくいこともありますが、質の良い睡眠が取れていないと注意力や作業能率を低下につながります。
さらに、睡眠の質が低下した状態が長く続くと疲労回復が難しくなり、日々の業務に支障が出てきます。

プレゼンティーイズムを測る方法

企業にとって無視することができないプレゼンティーイズムの問題。
これを解決する第一歩として、従業員が実際にプレゼンティーイズムに陥っているかどうかを測定する方法が開発されています。
ここでは、主に3つの方法について紹介しましょう。

HPQ(Health and Work Performance Questionnaire)

WHO(世界保健機関)が用意した評価手法です。過去4週間の自身のパフォーマンス10段階で行うもので、質問内容としては過去7日間の労働時間などがあります。
「健康と労働パフォーマンスに関する質問紙」として日本語版も出ており、設問数の少なさもあり実用的手法として広まりつつあります。

WLQ(Work Limitations Questionnaire)

1998年に米国タフツ大学のD・ラーナー博士らが開発した評価手法、日本では、損保ジャパンがこの手法を用いて「mimoza WLQ-J」の販売を開始しています。
同サービスでは「時間管理」や「身体活動」「集中力・対人関係」などの観点から合計で25問の設問が設けられ、プレゼンティーイズムの状態を把握できるようにしています。

SPS(Stanford Presentism Scale)

スタンフォード大学が開発したSPSもプレゼンティーイズムを測定する手法として有名です。
過去1ヶ月の業務遂行状況を6つの記述に対して5段階で自己評価させます。
評価は合計点数により判断することもあり、比較的簡単に評価することが可能です。

プレゼンティーイズムの対策

プレゼンティーイズム解消が企業の健康関連コストの低下や生産性向上につながる

プレゼンティーイズムは職場の労働生産性低下要因として注目されています。
また経済産業省の『企業の「健康経営」ガイドブック』によると、健康関連総コストのうちプレゼンティーイズムは約78%も占めると言われています

プレゼンティーイズムによる損失の指標は、身体的指標、生活習慣指標、心理的指標の3つに分けられ、身体的な指標では血圧・肥満、生活習慣指標ではアルコール摂取・運動習慣・睡眠休養、そして心理的指標では主観的健康観・生活満足度・仕事満足度・ストレスなどが影響を与えるとされています。

企業としても様々な課題の多いプレゼンティーイズムですが、その解消は、企業の損失を防ぎ、生産性向上に大きく貢献します。
どのように取り組めば良いのでしょうか。

まずは、プレゼンティーイズムの観点から、常日頃から従業員の状態を管理することが重要です。
ここでは、主に2つの対策を考えていきます。

健康管理プログラム等の全社的な実施

先ほども紹介したとおり、世の中にさまざまな健康管理プログラムが用意されています。このようなプログラムを適切に活用して、従業員の健康を管理することも重要です。
プレゼンティーイズムを無くすため、年一回の健康診断だけでなく、より短期的なサイクルの健康管理を進める必要があります。
さらに、社内で健康に関するセミナーを実施して、ヘルスリテラシーを向上させることも必要です。
従業員に定期的に健康に対して意識を向けることで、自分の心身の状態を考えるきっかけを与えることになります。

社内で従業員が健康相談できる場を作る

また、健康プログラムを実施するだけでなく、健康相談ができる場所を用意することも重要です。
それは、先ほど取り上げた「疾患・症状が仕事の生産性等に与える影響に関する調査」の結果からも明らかになっています。
たとえば「自分自身の健康問題について、気軽に話せる同僚、上司、部下がいる」と答えた人は、メンタル面の不調が少ないという結果が出ています

また「自分自身の健康問題の相談で、社内の健康相談を利用することがある」と答えた人は、偏頭痛・慢性頭痛が少ないとされています。
周囲に相談できる環境があるだけで、心身の不調が軽減できることが調査結果からわかります。このような取り組みを進めるだけで、プレゼンティーイズムのリスクを軽減できるでしょう。

プレゼンティーイズムは企業の生産性を大きく左右する

ここまで、企業の健康経営に大きな影響を与えるプレゼンティーイズムについてお伝えしました。
プレゼンティーイズムは目に見えないだけに、自社でどれほど広まっているかわかりません。

そのため、プレゼンティーイズムに陥らないように予防策を講じることが重要ではないでしょうか。
先ほど紹介した手法を用いてプレゼンティーイズムを測るだけでなく、従業員の労働時間や有給取得状況などを踏まえて、総合的に対応することが求められます。
まずはできるところから、プレゼンティーイズムの対策を進めましょう。

編集部

ヘルスケア通信の編集部

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