自治体 健康増進

2018/09/03

医療費削減の取り組みを紹介 自治体が住民とともにすべきこと

高齢化の進む日本では、毎年医療費が増加を続けており、自治体の財政を圧迫しています。自治体が抱える医療費削減という課題解決のため有効な方法、住民参加型の具体的な事例も交えご紹介します。

高齢化の進む日本では、毎年医療費が増加を続けており、自治体の財政を圧迫しています。
自治体が抱える医療費削減という課題解決のためにどのような方法が有効なのか、ここでは具体的な事例も交えながらご紹介します。

高齢化とともに増え続ける医療費と国の方針

毎年増え続ける医療費、その削減が叫ばれています。実際に何が医療費を増大させているのでしょうか。
まずは、その現状を見ていくことから始めましょう。

日本の医療費は毎年増え続ける

日本では急激に少子高齢化が進んでいます。
特に、2025年には団塊の世代が75歳以上になり、日本は超高齢化社会に突入します
これによって、真っ先に懸念されるのが医療費の増大です。
医療費は、毎年増加しており、国の負担も増大してしまいます。
これに対処するため、日本政府では様々な医療費削減につながる政策を打ち出しているのです。

医療費削減のため、国は様々な政策を進めている

アベノミクスでは、健康寿命の延伸を方針に掲げています。この健康寿命の延伸に向けた取り組みも医療費削減へとつなげる政策の一つです。

アベノミクスでは、健康・医療分野における2030年のあるべき姿として予防サービスの充実化、医療産業の活性化で世界最先端の医療等が受けられる社会、病気やけがをしても良質な医療・介護へのアクセスができる社会を挙げています。
これにより国民の健康寿命が延伸する社会が目指されています。

予防の充実では、公的な保健に依存せず、健康増進を行うような産業の促進、医療産業の活性化については、革新的医療の核となる医薬品、医療機器を世界に先駆け開発することが目指されています。
良質な医療・介護へのアクセスについては、自宅にいても受けられる医療・介護サービスやICT化による基盤整備などが提示されています。

骨太の方針2017では、社会保障分野の改革の取り組みの一つに、医療費適正化が挙げられています。

たとえば、都道府県が中心となって、医療関係者や自治体、保険者が参加する協議体を作り、診療行為のデータを収集して、その状況を「見える化」します。
これに基づいて、医療費の地域差を半減しようという試みが掲げられています。

薬価制度の抜本改革も骨太の方針2017で取り上げられています。
平成28年に打ち出した「薬価制度の抜本改革に向けた基本方針」に基づいて、医薬品に対する費用対効果評価の本格導入などの抜本改革を行おうとしています。

このように、政府はさまざまな形で医療費の削減を進めようとしているのです。

医療費を増加させる様々な要因

国が強力に推進しようとしている医療費の削減。しかし、なぜ医療費は増加しているのでしょうか。ここではその要因について考えてみたいと思います。

はしご受診

同じ症状の治療を違う病院を回って複数回受けることをはしご受診といいます。
最初に行った病院で診てもらったけど、何かしっくり来ない、処方してもらった薬の効き目が弱いのではないか。
そう感じて、同じ病気で異なる医療機関を回るはしご受診が増えています。
もちろん、健康保険を支払っていれば、どこで何回受診を受けるかは自由です。
しかし、患者側も医療費がかさみ、時間の無駄にもなってしまいます。
また、病状によっては身体に対する負担も増すことになります。

はしご受診は、国の医療費負担を増大させています。
これでは、国も患者側も双方にメリットがない形になってしまいます。これをどのように減らすかも大きな課題といえるでしょう。

ジェネリック医薬品の普及が遅れている

ジェネリック医薬品の使用も医療費を削減するうえでは、効果が期待できるアプローチです
ジェネリックという言葉は、すでにご存知の方も多いのではないでしょうか。
一般的な認知は広まってきている印象です。
しかし、実際にどれくらい普及が進んでいるのでしょうか。

厚生労働省の調査によると、ジェネリック医薬品は平成29年9月までで65.8%まで使用されていると発表しています。
平成25年が46.9%、平成27年が56.2%であることを考えると、着実に普及していると言って良いでしょう。

しかし、諸外国に比べるとジェネリック医薬品の使用率は低いです。
ドイツなどの医療先進国では、普及率は70%を超え、アメリカでは90%がジェネリック医薬品です。
いずれも、医療費削減が大きなテーマとなり、日本よりも早くジェネリック医薬品の普及に力を入れてきたのが大きいようです。
日本でも、今後さらにジェネリック医薬品の普及を進めていくとしていますが、諸外国と比較すると遅れている感は否めません。

健診結果の放置や受療をやめるひと

健康診断の受診率を高めることも医療費削減に貢献するでしょう。
健康診断の受診率はまだまだ低く、特に特定検診の受診率は大きな課題です。
平成27年度のデータになりますが、特定健康診査の対象者数は約 5,396 万人、しかし、受診者数は約 2,706 万人。
その割合は50.1%と約半分ほどになっています。
平成20年度が38.9%だったことを考えると、増加傾向にはありますが、それでも半分の人は未受診という状況です。
特定検診を受診することは、疾患の早期発見や早期治療につながるというメリットがあります。

受診した半分の人は、この恩恵を受けられますが、未受診の方々は疾患にかかってから気づくという最悪のパターンに陥ってしまうでしょう。
疾患の発見や治療が遅くなると、疾患が重篤化し本人の負担が大きくなるだけでなく、治療期間が延びたり、治療が高度化することで治療費が増えていきます。
こうしたことは結果的に国全体の医療費を増大させることにもつながります。

また、健康診断で数値が悪化していても、それを無視してしまうこともあります。
また、糖尿病などの生活習慣病の治療も途中でやめてしまう人もいるそうです。
早期発見をしても、早期に手を打たなければ意味がありません。
結果的に、本人と治療費を負担する国の双方にデメリットが生じてしまいます。

医療費削減の取り組みを進めるには

それでは、医療費削減に向けてどのような取り組みが進められているのでしょうか。
ここでは、主に3つの取り組みについて紹介しましょう。

データヘルスの試みが動き出した

近年、ビッグデータという概念が注目を集めていますが、この流れはヘルスケアの分野でも同様です。
大量のデータを分析して、病気の予防などを実現。
ゆくゆくは医療費の増大を抑制しようという動きがあります。

これが、「データヘルス」という概念です。

日本では、2008年から健康診断の結果やレセプトなどが電子化され、医療データが大量に誕生しています。
このデータを分析して、国民の健康を増進しようと取り組みが進められています。

実際、このデータヘルスを象徴するようなソリューションが多数誕生しています。
レセプトを分析することで、疾病ごとの医療費を把握できるようになったり、個人の日々の血圧、心拍などのバイタルデータや、歩数、睡眠時間をウェアラブル端末などを用いて計測して、一人ひとりにあったプログラムを紹介したりするソリューションもあります。

データヘルス計画で健康診断の受診と受療を促進

また、データヘルスと連携することで、受診や受療促進につなげることも期待されています。
健康診断の必要は感じているものの、面倒くさいから病院に行きたくないという人もいるでしょう。
しかし、データに基づいて、健康診断の必要性を伝えられると行動変容を可能にするかもしれません。

2015年から、データヘルス計画と呼ばれる健保組合等の保険者が、健診やレセプトデータの分析に基づいて保険事業をPDCAサイクルで効果的・効率的に実施するための事業計画が開始されています。
保険者は、特定健診のデータを基に、特定保健指導などを通じて生活習慣病リスクに対して効果的・効率的にアプローチできるようになります。

セルフメディテーションで医療費を抑える

また、セルフメディケーションを行うことも医療費抑制につながるでしょう。
WHOの定義によると、セルフメディケーションとは「自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てすること」をいいます。

具体的には、普段から適度な運動や栄養バランスのよい食事をとり、十分な睡眠を確保しつつ、体調が悪くなったときは市販薬を活用しながら健康維持に務めることなどが挙げられます。
このような習慣を身につけることで、特に生活習慣病の予防につながるのではないかと期待されています。

生活習慣病が医療費に占める割合は約9.8兆円、全体のおよそ3分の1にあたります。
セルフメディケーションが促進されるようスイッチOTC医薬品を購入した場合は、その費用が所得税控除の対象となります。

いわゆる「セルフメディケーション税制」で、今後の利用促進が期待されています。

各自治体は、住民を巻き込むためにどんなことから始めているか

また、各自治体も医療費削減に向けてさまざまな取り組みを進めています。
ここでは、事例として3つの取り組みを紹介しましょう。

静岡県の取り組み

静岡県では、独自の取り組みとして「ふじ33プログラム」を実施しています。
2012年6月からスタートしたこのプログラムは、参加者の1日の平均歩数を1,104歩増加させるなど成果を出しています。

ふじ33プログラムという名称にも意味があり、「ふ」は普段の生活で、「じ」は実行可能な、「3」は「運動」、「食生活」、「社会参加」の3分野、もう一つの「3」は3人ひと組で3ヶ月間実践することを表しています

また、県民の特定健診データを分析して地図に落とし込み、市町の健康づくりに資する「健康マップ」を作成しています。これにより、高血圧症有病者や習慣的喫煙が多い地域などが明らかになりました。

さらに、日々の運動、食事などの生活改善や、健康診断の受診、運動などを行った住民が特典を受けられる「健康マイレージ」制度も設けています。
マイレージが貯まると、協力店からプレゼントや割引特典を得られるなどメリットがあります。

広島県呉市の取り組み

医療費の抑制に成功している自治体もあります。
その一つが、広島県呉市です。
呉市は、人口23万人のうち65歳以上が約34%を占め、同規模の都市の中でも高齢者の割合が高く、何も施策を打たないと、医療費の増大が目に見えており、危機感を持っていました。
そこで、呉市はレセプトデータなどをもとに、健康の維持・増進を図ろうとしました。
また、ジェネリック医薬品の普及にも積極的です。
支障がない場合は、ジェネリック医薬品を推奨します。

ジェネリック医薬品に変えて、支払金額が200円以上少なくなる場合に差額を伝えるようにしました。
呉市は、この取り組みを2008年度からはじめ、すでに10億5000万円以上の削減効果が出ているといいます。

また、いわゆるはしご受診を減らすため、条件に該当する患者の自宅に訪問するなどして気づきを与える取り組みも行なっているそうです。

神奈川県横浜市の取り組み

横浜市では、「よこはまウォーキングポイント」というプログラムを導入しています。
スマートフォン向け歩数計アプリをインストールして、歩くという日常行為を楽しくして、健康増進を図ろうという取り組みです。

アプリには、横浜市のウォーキングコースが100以上掲載されています。
利用できるのは、横浜市在住・在勤・在学の方などが対象で、これにより健康増進、医療費削減を図っています。

まとめ

ここまで医療費削減に向けた取り組みや自治体の動きについて紹介しました。
医療費削減の動きは、国の政策にもなっており、国が進めるジェネリック医薬品の普及や、はしご受診の削減などの施策が進めば、大きな成果を生むことができるでしょう。
保険者が、健診データ・レセプトデータを分析して、保険事業に取り組むデータヘルス計画も始められています。

また、私たち一人ひとりがセルフメディケーションで適度な運動やバランスの良い食事、睡眠の質の改善などに取り組むことで、健康を維持することができます。
自治体は、ウォーキングの促進など住民が気軽に参加しやすい取り組みから始めて、住民の健康維持のモチベーションを継続することが成功のポイントのようです。
こうした取り組みを積み重ねて住民を巻き込むことが、最終的に医療費削減へとつながっていくものと考えられます。

編集部

ヘルスケア通信の編集部

健康経営などの人事・総務の方に役立つ情報を発信中

※本記事の無断転載及び複製等の行為は禁止しております。
※本コラムに記載されている一切の情報は、その効能効果、安全性、適切性、有用性、完全性、特定目的適合性、最新性、正確性を有することを保証するものではありません。詳細については、「サイトご利用にあたって」第4項をご確認ください。