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スポーツ庁に聞く:官民連携で取り組む、成人のスポーツ人口を2000万人増やす計画と、企業のメリットとは?

スポーツ庁は第2期スポーツ基本計画の中で、成人の週1回以上のスポーツ実施率を65%程度とする目標を掲げています。 中でもビジネスパーソン世代のスポーツ実施率の低さが課題となっており、民間企業と連携した取り組みを進めていま […]

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スポーツ庁は第2期スポーツ基本計画の中で、成人の週1回以上のスポーツ実施率を65%程度とする目標を掲げています。
中でもビジネスパーソン世代のスポーツ実施率の低さが課題となっており、民間企業と連携した取り組みを進めています。
今回は、こういった取り組みを中心となって推進しているスポーツ庁の松崎智一さん(健康スポーツ課 課長補佐・以下敬称略)に、その取り組みと企業のメリットなどについて、和泉正幸(ドコモ・ヘルスケア株式会社 代表取締役社長)<取材当時>が伺いました。 

スポーツ庁の松崎智一さん と ドコモ・ヘルスケア株式会社 社長 和泉正幸

 

スポーツに親しむ成人を2000万人増やしたい

スポーツ庁の松崎智一さん

―まずは、第2期スポーツ基本計画の目的について、教えてください。

「スポーツ庁は、スポーツを通じて、国民が生涯にわたり心身ともに健康で文化的な生活を営む社会の実現を目指して、スポーツの普及に取り組んでいます」(松崎さん)

第2期スポーツ基本計画では、4つの観点から、目指すべき方向性を示しています。

  • 「人生」が変わる!:スポーツで人生を健康で生き生きとしたものにできる。
  • 「社会」を変える!:共生社会、健康長寿社会の実現、経済・地域の活性化に貢献できる。
  • 「世界」とつながる!:多様性を尊重する世界、持続可能で逆境に強い世界、クリーンでフェアな世界に貢献できる。
  • 「未来」を創る!:2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会等を好機として、スポーツで人々がつながる国民運動を展開し、レガシーとして「一億総スポーツ社会」を実現する。

出典:スポーツ庁資料

そういった世界の実現のために、松崎さんは、特に、
①スポーツ参画人口の拡大
②スポーツを通じた活力があり絆の強い社会の実現
という2つの課題に取り組んでいます。

「第2期スポーツ基本計画では、成人の週1回以上のスポーツ実施率を42.5%(平成28年度調査)から、65%程度とする目標を掲げていますが、それを達成するためには新たに2000万人がスポーツに親しむ必要があります。

そもそもスポーツの語源は、“deportare(デポルターレ)”とも言われていまして、
「日々の生活から離れる気晴らしや楽しみ、休養」といった意味合いがあり、このことからも決して激しい運動や勝敗を競うことだけではなく、楽しみながら体を動かすことも「スポーツ」に含まれます。

トップアスリートの育成や競技による盛り上がりももちろん重要ですが、自分の気晴らしや楽しみのために体を動かす「スポーツ」のすそ野を広げていくことが必要です。

一人一人がこれまでのスポーツのとらえ方を変えていくと共に、スポーツに取り組むきっかけを得やすい環境を整えることが必要だと考えています」(松崎さん)

歩くことは立派なスポーツ - FUN+WALK PROJECT

― そういった背景から、FUN+WALK PROJECTが生まれたんですね。

「はい、そうなんです。
成人の週1回以上のスポーツ実施率の推移を見てみますと、ここ3年はアップしているんです。
しかし、20~50代のスポーツ実施率は全体の平均を下回っており、ビジネスパーソン世代がスポーツに取り組めるきっかけづくりが必要だと考えました」(松崎さん)

出典:スポーツ庁「体力・スポーツに関する世論調査(平成24年度まで)」及び「東京オリンピック・パラリンピックに関する世論調査(平成27年度)」、「スポーツの実施状況等に関する世論調査(平成28年度から)」

出典:スポーツ庁「スポーツの実施状況等に関する世論調査」(平成30年度)

FUN+WALK PROJECT
スポーツ庁が中心となって取り組む、ビジネスパーソン世代のスポーツ参画人口拡大を通じて、国民の健康増進を図る官民連携プロジェクト。
「歩く」に「楽しい」を組み合わせることで、自然と「歩く」習慣が身につくよう、通勤時の歩きやすい服装の推進や、歩数に応じてご当地キャラが変身したり、歩くとお得なクーポンが受け取れるアプリの提供などを行っています。

 

― “歩く”ということに着目したのはなぜですか?

「日々忙しく、なかなかスポーツをするための時間を確保できないビジネスパーソン世代に対して、普段の生活から気軽に取り入れることができるのがウォーキング。
例えば、通勤時にプラス10分歩くだけなら、始めやすいだろうと考えました。

歩くことは立派なスポーツなんです。

例えば、運動に取り組もうと、腹筋やスクワットを毎日やろうと決めても、継続させることはかなり大変です。1日やらなかったりすると、ずるずると継続できなくなってしまうということはよくあると思います。

でも、「歩く」ことは、
毎日無理に努力しなくても、少なくともゼロではないから、「今日は何歩歩いた」ということが数字で出て励みになりやすい。また、翌日も頑張れる。
それが継続につながると考えました」(松崎さん)

― それは全くの同感です。ドコモ・ヘルスケアも、まずはビジネスパーソンが一番取り組みやすく、日常で知らない間にすでに行っている“歩く”ことをちょっと増やす取り組みを、一番最初に取り組みましたし、ご相談いただく企業様にも、強くお勧めしています。

スポーツ庁内全体でのウォーキングイベントが話題に

ドコモ・ヘルスケア株式会社 社長 和泉正幸

― 実際に、スポーツ庁の中でも、“歩く”ことを促進するキャンペーンをされたとか。何がきっかけだったのですか。

「スポーツ庁として、スポーツ実施率の向上を掲げていますが、振り返ってみると、多忙でスポーツに取り組めていない職員が多くいることが課題でした。
だからこそ、自分たちも取り組まなければと考えました。
そこで、今回(2019年2月)、スポーツ庁全体で歩数競争に取り組んでみようということになったんです」(松崎さん)

― 結果はいかがでしたか。

「初めての取り組みでしたが、参加率70%と高く、平均歩数も1万歩を超え、職員の関心が高いことに驚きました」(松崎さん)

― 初めてのキャンペーンでいきなり参加率70%は、非常に高いですね。
どんな工夫をされたんですか。

「部署対抗を取り入れたことと、毎週末に、個人ランキングと部署ランキングを発表したことが良かったと思います。

終了後には、長官室で表彰式を行い、歩数上位者で記念撮影をしました。期間の前半よりも後半の方が平均歩数も上昇しており、参加者が自分でできる範囲で歩数を意識したことが大きかったのではないかと思います。」(松崎さん)

― ドコモ・ヘルスケアでは、部署横断でチーム編成を行っており、普段一緒に仕事をしていない従業員同士がともに頑張る仕組みにしています。
仕事では話したことがない人とチームになりますが、歩数の話をきっかけに相互理解が進むので横のつながりができ、仕事でのコミュニケーションも活性化しています。

「スポーツ庁でも、ランキングの順位や歩数が職員同士の話題になっていました。
運動が得意でなかったのに1日の平均歩数が1万9千歩だった女性職員が、職場で声をかけられることが増えたと笑っていました。
今回の取り組みが、単に歩数の増加ということだけではなく、コミュニケーションの活性化にもつながったことが効果としては大きかったと思います。」(松崎さん)

 企業での取り組みを支援する「スポーツエールカンパニー」認定制度

スポーツ庁の松崎智一さん

― そういった取り組みをしている企業を「スポーツエールカンパニー」として、認定する制度があるんですよね。
ドコモ・ヘルスケアも認定をいただいております。

「スポーツエールカンパニー」認定制度
従業員の健康増進のために、スポーツの実施に向けた積極的な取り組みを行っている企業を認定する制度。平成29年度に創設。
平成30年度認定企業は、347社

「働き盛り世代の運動不足解消のためには、多くの時間を過ごす職場が主体となって運動に取り組むきっかけ作りをすることが重要と考え、そういった社会的機運の醸成のために、創設しました」(松崎さん)

― 運動・スポーツを実施する頻度が減った理由の1位が、「仕事や家事が忙しいから」だと伺いましたが、企業が主体となって取り組めば、従業員にとってはその理由がなくなりますね。

出典:スポーツ庁「スポーツの実施状況等に関する世論調査」(平成30年度)

― 従業員にとっては、運動に取り組むきっかけになるというメリットがありますが、企業が取り組むメリットはどんなところにありますか。

「月並みな話ではありますが、個人が心身ともに健康な状態でいることにより、パフォーマンスの向上につながります。そして、それが企業にとっても生産性の向上が図られることになります。最近、「プレゼンティーイズム」という言葉を耳にすることも増えてきましたが、その解消にも寄与すると考えています。」(松崎さん)

※プレゼンティーイズム:出勤はしているが生産性が上がっていない状態

― このような活動を広めていく中で、課題になるのはどんなところでしょうか。

「このような取り組みにより経営面で結果が出ている企業がどんどん増えること、そしてそれが可視化されることが重要と考えています。もしかしたら、最初は少し時間がかかるかもしれませんが、従業員の健康に対する投資が、まわりめぐって経営への効果をもたらすということを示していければと思います。」

FUN+WALK PROJECTもスポーツエールカンパニー認定制度も、まだ始まったばかり。
クールビズのように広く国民に認知され、受け入れられることが、スポーツ実施率のアップにつながります。まずは、そこまで広めることが目標です」(松崎さん)

― クールビズも、最初はネクタイを外すことに抵抗がありましたが、今では普通になりました。

「“歩く”取り組みも浸透すれば、歩きやすい服装で通勤することが普通になるはずです」(松崎さん)

― 健康経営支援企業として、ドコモ・ヘルスケアも、“歩く” ムーブメントの一翼を担っていきたいと考えています。

ドコモ・ヘルスケア株式会社 社長 和泉正幸

まとめ

最近は、リュックサックで通勤する人なども目にするようになり、歩きやすい服装での通勤も徐々に浸透しつつあります。
働き盛りのビジネスパーソン世代に対して、スポーツの習慣化を促すためのきっかけづくりを図ることで、ゆくゆくは、これらの世代が、“スポーツ”盛り世代になる世界を目指しています。そして、従業員一人ひとりが活力のある充実した生活を送ることができれば、それが企業の成長につながっていくと考えます。