健康経営
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今、日本の重要課題である生産性の向上。今後注目なのは健康経営

働き方改革関連法の施行に伴い、多くの日本企業が生産性の向上を求められています。そうした中で今注目されているのが「健康経営」への取り組みです。そこで今回は、企業の経営者や総務で働く方に向けて、生産性の向上に直結する健康経営の重要性についてご説明します。

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働き方改革の一環として、日本企業の多くが労働時間の短縮に取り組んでいます。しかし、ただ残業を減らすだけではよい結果を導くことはできません。本質的に重要なのは、組織全体としての生産効率を上げることなのです。今回は、企業の生産性アップのために重要なポイントとなる「健康経営」についてご紹介します。

 

生産性の意味と計算方法

生産性とは、労働時間に対してどれほどの成果が得られたのかを意味します。その中でも、労働者1人あたりが1時間で生み出す成果のことを「労働生産性」と呼びます。つまり、より少ない資本や労力(=インプット)でより多くの利益(=アウトプット)を生み出すことができるほど、生産性が高いということになります。

2017年の調査によると、日本の労働生産性は47年連続で主要先進7ヵ国(G7)の中で最下位でした。上位に位置するアメリカやドイツと比べると3分の2程度しかありません。残念ながら、日本は労働生産性が非常に低い国ということになります。
昔から日本人は真面目で勤勉といわれているにもかかわらず、なぜこれほどまでに労働生産性が低いのでしょうか。その原因の一つに「長時間働くことが当たり前」という風潮があります。労働時間が長くなればなるほど労働者の作業効率が低下するうえ、残業代や諸経費も膨らんでいきます。同時に従業員のストレスも増加し、病気や事故といったリスクも高まります。長時間労働を良しとする古い考え方を見直さなければ、日本企業の生産性を改善することは難しいでしょう。
2019年4月に施行された「働き方改革法」でも、労働生産性の向上がテーマの一つとして挙げられています。少子化により日本の労働人口が減少の一途をたどる中、少ない労働力で全体の生産量を向上させることは避けられない課題です。目先の業務改善だけにとらわれず、生産性を向上させるための中長期的なコスト削減策を計画的に進める必要があります。

生産性を向上させるための方法

前述のように、生産性を高めるためには、より少ないインプットからより多くのアウトプットを生み出さなければなりません。すなわち、「インプットを減らすこと」と「アウトプットを増やすこと」の両方からアプローチすることが必要となります。生産性を向上させる方法には、次のようなものがあります。

  • 社員一人一人の能力を高める
  • 社員のモチベーションを高める
  • 社内コミュニケーションを活性化する
  • 業務の無駄をなくす
  • タイムマネジメントを行う

企業として、これらをどのように推進していけばよいのでしょうか。ここでは、生産性の向上を実現する具体的な方法について解説します。

付加価値、生産量を増やす

生産性を上げるためには生産量(アウトプット)を増やす必要があります。生産量は、生産性計算式において分子となるものです。生産量増加のために企業がすべきは、社員研修などを通じて従業員のスキルや能力を向上させることです。

例えばパソコンのショートカットキーの一つをとっても、活用するのとしないのでは作業効率に大きな差が出てきます。自己流のパソコン操作を続けている従業員に効率的な操作方法をマスターさせれば、処理能力がぐっと高まって時間あたりの作業量が増加します。このほかにもブラインドタッチを習得したり、Excel、Word、PowerPointといったOfficeソフトの関数や便利機能を覚えたりと、いわゆるパソコンスキルやOAスキルの向上は業務の効率化に直結します。
また、仕事を円滑に進めるための「コミュニケーションスキル」やパフォーマンス向上のための「セルフマネジメント」といったビジネススキルに関する指導も有効です。職種や役職に応じてさまざまなスキルアップ研修を実施することで、組織全体の生産量、すなわち付加価値をアップさせることができます。

生産性向上のためのスキルは多岐にわたります。社内研修や勉強会の機会を増やし、従業員がスキルアップできる機会を積極的に提供していきましょう。人材育成制度が整っている会社は働きやすい職場でもあるため、従業員の満足度やモチベーションのアップにもつながります。

投入する労働力を減らす

労働力や労働時間、すなわちインプットを減らすことも一つの方法です。これらは生産性計算式において分母となる要素です。

生産性を向上させるうえで、タスクや時間の管理は大きなポイントとなります。単純な長時間労働を続けていても、生産性を高めることはできません。限られた時間の中でいかに効率よく業務を遂行するかを考えることができれば、労働生産性は大きくアップします。
このための施策として、社員は自身の業務を可視化することが重要です。重要度や緊急度によって業務の優先順位を決め、時には取捨選択を行うことも必要となります。また、タイムマネジメントを可視化することも有効な手段です。例えば1日単位で自身の業務を洗い出し、それぞれに費やした時間を計測します。こうすることで不要な長時間労働をなくし、所定の勤務時間内に業務を終わらせるという意識を持つことができます。

それでは、会社としてできることは何でしょうか。それは、業務を効率化・自動化するためのシステムやツールを導入することです。IT技術の発展とともに、従業員の負荷を軽減できる優れたアプリケーションが次々と登場しています。これまでのメールに代わるチャットツールをはじめ、タスク管理ツール、Web会議ツールなど、さまざまなサービスがあります。経理や人事のルーティンワークを自動化するシステムを取り入れてもよいでしょう。このほか、時間や場所を有効に活用できるテレワークの導入も有効です。
また業種によっては、最新のシステムや機器を導入する必要があるかもしれません。AIやロボットといった高度なテクノロジーの開発が進む今、「機械でできることは機械に任せる」ということも必要になってきます。
最新技術の動向に目を向け、生産性の向上が見込める設備を適切に判断して投資を行うのは非常に重要なことです。

生産性の向上を目指すにあたり今後注目の「健康経営」

生産性向上のキーポイントとして、今、大きく注目を集めているのが「健康経営」です。働き方改革のベースとも言える重要な経営戦略として政府も注目しており、国を挙げての取り組みが始まっています。大企業はもちろん、人材の少ない中小企業にとって、従業員の健康は大きな資産です。従業員の健康への投資は、企業にとって多くのメリットがあると言われています。ここでは、健康経営と生産性の向上の関係と、具体的な取り組みについて解説します。

「健康経営」という言葉の意味

健康経営とは、従業員の健康維持および増進を経営的な視点で捉え、会社の業績向上やイメージアップにつなげるという考え方です。1980年にアメリカのロバート・ローゼンによって提唱された「健康な従業員こそが収益性の高い会社をつくる」という”ヘルシーカンパニー”思想から生まれました。
健康経営が推進される背景には、働く人々の間でうつやメンタルヘルス不調が増えていること、さらには過労死などが社会問題となっていることが挙げられます。また少子高齢化に伴う人手不足も相まって、従業員の健康促進は企業の存続や成長に不可欠な要素となっているのです。

2014年以降、経済産業省と東京証券取引所が共同で「健康経営銘柄」を選定しており、健康経営への取り組みを促しています。また2017年からは「健康経営優良法人認定制度」を実施するなど、健康経営は日本でも少しずつ広まりつつあります。健康経営を推進しているとの評価を受けることは企業価値の向上をもたらし、ひいては優秀な人材の獲得につながります。つまり、企業にとっても労働者にとっても大きなメリットとなるのです。

健康経営がなぜ生産性の向上につながるのか
プレゼンティーイズムとアブセンティーイズムの考え方

当然のことながら、生産性を上げるためには従業員が健康でなければなりません。体調が万全でない中で仕事を続けてしまうと、判断力が鈍ったり小さなミスを繰り返してしまったりと、本人も気づかないうちに労働損失をもたらしてしまいます。
こうした労働生産性の低下を招く要因としてプレゼンティーイズムやアブセンティーイズムが問題視されています。

プレゼンティーイズム(presenteeism)とは、「従業員が出社しても、健康上の問題からパフォーマンスが低下している状態」を意味します。つまり、無理をして出勤しているということです。一方でアブセンティーイズム(absenteeism)とは、病気や体調不良により、従業員が頻繁に遅刻や早退、欠勤することを示します。いわゆる「病欠」です。
もともと日本では、アブセンティーイズムによる生産性の低下が問題視されていました。しかし近年では、賃金を払っているにもかかわらずそれに見合ったパフォーマンスが得られないプレゼンティーイズムの方がより大きな損失を与えると考えられています。
生産性を向上させるためには、従業員の健康を管理してプレゼンティーイズムやアブセンティーイズムを解消しなければなりません。

具体的にどのような取り組みがあるのか

健康経営を推進するにあたって、企業はどのようなことから始めればよいのでしょうか。まずは健康診断やストレスチェックの受診促進、メンタルヘルス対策の推進、福利厚生に健康活動をサポートするようなメニューを取り入れるなど、基本的なところから見直すことが必要です。もちろん、清潔で快適なオフィス空間の整備も重要です。これ以外にも、フィットネスジムへ通うことを支援したり、部活動を推進したり、禁煙を推進したりと、企業によって多種多様な施策が存在します。
とは言え、日本国内でこうした取り組みを行っている企業はまだまだ多いとは言えない状況です。なぜなら従業員の健康習慣はあくまでプライベートの問題であり、企業が口出しすることは簡単ではないからです。健康への取り組みを強制してしまうと、社員にとっては却ってストレスとなる可能性もあります。健康とは「病気でない」ことだけでなく、従業員が高いモチベーションを保っている状態のことです。健康経営を成功に導くためには、経営者が主体となって全従業員を牽引し、健康意識を高めるような環境づくりを進めていかなければなりません。

日本ではまだ発展途上と言える健康経営ですが、一方で独自の健康経営に取り組む企業も増えてきています。ここでは、その具体的な事例をご紹介します。

株式会社ローソン

大手コンビニチェーンのローソンでは、2015年6月より「ヘルスケアポイント」という制度を導入しています。これは、社内の健康診断で何らかの問題が見つかった場合に、社員自らで改善計画を立て、それを達成した場合にポンタカードのポイントがもらえるという制度です。また、全社員の健康の推移と各種取り組みの成果を数値的に分析し、その結果を「健康白書」として毎年度公表しています。

テルモ株式会社

大手医療機器メーカーのテルモ株式会社は、レコーディングダイエットプログラムの提供やウォーキング大会の開催など、テルモ健康保険組合と連携した活動に継続して取り組んでいます。また、がんの早期発見・早期治療のため、会社が費用を全額負担してがん検診の受診を推進しています。このほか、乳がんや子宮頸がん検診に必要な費用も健康保険組合で負担し、女性社員の健康管理にも力を入れています。こうした取り組みにより、テルモ株式会社は「健康経営銘柄」に5年連続で選定されています。

株式会社ディー・エヌ・エー

大手ITベンチャーの株式会社ディー・エヌ・エーでは、健康経営の基本方針に「プレゼンティーイズムの解消」を掲げています。社員アンケートの結果やリクエストをもとに食事、運動、睡眠に関するセミナーや研修を実施しています。例えば「世界初の腰痛ゼロカンパニー」を目指し、腰痛改善プロジェクトなどを推進しています。こうした取り組みにより、2017年から3年連続で健康経営優良法人に認定されています。また2019年には初めて「健康経営銘柄」に選定されました。

ヤフー株式会社

Yahoo JAPANを運営するIT大手のヤフー株式会社も、多面的な健康経営に取り組んでいる企業の一つです。健康診断の結果に基づき生活習慣病の対策に力を入れています。社内でセミナーを開催して病気に関する知識を共有し、社内レストランでは栄養面をサポートするメニューを提供しています。また一定以上の時間外労働をしている社員にはアラート通知で注意喚起し、長時間労働によるリスクを未然に防ぐ取り組みも行っています。

ここからは、ほかにはない独自の健康経営を展開しているベンチャー企業をご紹介します。

株式会社キュービック

デジタルマーケティングの領域で急成長を続けるITベンチャーの株式会社キュービックでは、ベンチャーならではの斬新な健康経営を推進しています。まず、歩数や心拍数がわかるウェアラブル端末「Fitbit(フィットビット)」を全社員に支給しています。また社員向けにオーガニックのエナジードリンクを格安で販売したり、就業時間の中で15分の昼寝を容認したりと、とてもユニークな方法で社員のモチベーションアップを図っています。

株式会社ヒューゴ

大阪に本社を置くITベンチャーの株式会社ヒューゴでは、スペインの昼休憩として知られる「シエスタ」に倣い、13〜16時まで3時間の休憩を取得するシエスタ制度を導入しています。この時間は社員が自由に過ごしてよい時間で、昼寝や昼食はもちろん、映画館やネイルサロンに行く社員もいるそうです。業務の間に社員がリフレッシュできる時間を設け、その後のパフォーマンスを向上させるシステムです。

サムライト株式会社

コンテンツマーケティング支援において国内トップクラスの実績を誇るサムライト株式会社では、「パーソナルトレーニング制度」を導入しています。同社の社員であれば無料で受けることができ、ボディメイクに関する座学やトレーニング指導、トレーナーとの対面カウンセリングなど、充実したメニューを提供しています。肩こりや腰痛に悩む社員をサポートしたいという思いから取り入れられたこの制度は、社員の健康とパフォーマンスの改善に大きく貢献しています。

働き方改革により生産性の向上のみならず、健康経営は大きな課題になります。とくに健康経営は企業の取り組みがかかせません。ぜひ制度を導入し、組織の活性化を実現させてみてはいかがでしょうか。