健康経営

2018/10/22

特定健診・特定保健指導の第3期の変更点と受診者への働きかけ

平成20年に開始された特定健診・特定保健指導は2018年度から第3期を迎えました。第3期の変更のポイントと、特定保健の指導対象者に効果的に生活改善を目指してもらう最適な方法についても紐解いていきます。

平成20年に開始された特定健診・特定保健指導は2018年度から第3期を迎えました。
第3期の変更のポイントとはどのようなものなのかご紹介します。
また、特定保健の指導対象者に効果的に生活改善を目指してもらうためには、どのような方法が最適なのかについても紐解いていきたいと思います。

特定健診・特定保健指導の概要と変遷

従業員の生活習慣病を予防するために特定健診があり、特定健診の結果から、生活習慣病の発症リスクが高い対象者の生活習慣病の予防に繋げるために保健師、管理栄養士などの専門スタッフによる特定保健指導が行われることはよくご存じかと思います。

しかし、特定健診・特定保健指導が具体的にどのような背景からできた制度で、どのように見直しを重ねられてきたかをご存じの方は少ないのではないでしょうか
そこで、まずは制度が生まれた背景とその見直しの過程を見ていきましょう。

特定健診・特定保健指導の制度はなぜできたのか

生活習慣病は、日本人の死亡者数の約6割を占め、国民医療費の約3割を占めます。
こうした状況を解決するため、生活習慣病の予防を目的として生まれたのが、特定健診・特定保健指導です。

特定健診と特定保健指導は、厚生労働省により平成20年に始まりました。
加入者のメタボリックシンドロームの解消から生活習慣病の予防を図るための施策として開始されました。

特定健診・特定保健指導は見直しを重ねてきた

特定健診・特定保健指導が平成20年に開始されると、5年ごとに制度の見直しが行われました
平成25年度には第2期が開始され、糖尿病の検査値であるHbA1cが国際的に使われる表記に見直しされるなどの変更がなされました。
また、特定健診の実施率と特定保健指導率の目標率はそれぞれ、第1期と同じ70%、45%に設定され、メタボリックシンドロームの該当者および予備軍の減少率は、平成29年度までに平成20年度対比で25%減少させると目標設定されました

実際に数字がどのように推移したかを見てみると、特定健診の実施率は、平成20年度には38.9%でしたが、平成27年年度は50.1%。
特定保健指導の実施率は平成20年度の7.7%が平成27年度には17.5%。
メタボリックシンドロームの該当者と予備軍の減少率は、平成20年度と平成27年度の比較で16.5%という数字となっています。
いずれも増加は見られましたが、目標値に到達しない数値となっています

特定健診の第3期の変更点とは

平成25年度から5年が経過した平成30年度には再び見直しが行われ、第3期特定健診・特定保健指導が開始されました。
第3期の実施にあたり、厚生労働省では「保険者による健診・保健指導等に関する検討会」を実施し、第1期・第2期の振り返りを報告書にまとめています。

報告書によれば、特定健診の実施率は約50%まで達したものの、特定保健指導の実施率は目標の45%を大きく下回るわずか18%、特に、健保組合や共済組合の3割は実施率5%にとどまっているといいます。

第3期では、この実施率の現状を改善する必要があり、厳しい財政状況と限られた人的リソースの中、制度の運用を見直すとしています。

特定健診・特定保健指導、両方でテーマとなっているのは、「保険者機能の責任明確化、現場の効率化とICT活用」です。
運用面では、昨年から保険者別に特定健診・保健指導の実施率を公表。
以下の目標値を定め、保険者機能の責任をより明確化します。


【特定健診の実施率目標】

全国目標 70%以上
市町村国保 60%以上
国保組合 70%以上
協会けんぽ 65%以上
単一健保 90%以上
総合健保(私学共済含む) 85%以上
共済組合 90%以上。


【特定保健指導の実施率目標】

全国目標 45%以上
市町村国保 60%以上
国保組合 30%以上
協会けんぽ 35%以上
単一健保 55%以上
総合健保(私学共済含む) 30%以上
共済組合 45%以上。
※厚生労働省「第3期特定健康診査等実施計画期間における特定健診・特定保健指導の運用の見直しについて」61ページより抜粋


特定健診では検査項目の見直しを行います。
血中脂質検査では中性脂肪が400mg/dl以上や食後採血の場合は「non-HDLコレステロール」を用いた検査も実施したとみなし、血糖値検査では、原則として「空腹時血糖」もしくは「HbA1c」(ヘモグロビンエーワンシー)を測定し、空腹時以外はHbA1cのみを測定すると定められました。

ICTの活用では、かかりつけの病院など医療機関との連携強化を進めます。
病院の医師が、治療中でも特定健診の受診を推奨。
特定健診の結果などのデータを共有できるように体制を整え、運用を改善するとしています。また、マイナンバーを活用した特定健診のデータ提供サービスの構築も視野に入れています。

特定保健指導の第3期の変更点とは

特定保健指導でも見直しが行われます。
特に、特定保健指導対象者の実績評価と初回面接実施の改善が大きな改善点です。

行動計画の実績評価の時期をこれまでの「6か月以降」から、保険者の判断で「3か月以降」と、することができるようになりました。

また、受診者の利便性向上のため、特定健診受診日に腹囲・体重、血圧、喫煙歴等の状況から対象と見込まれる者に対して、健診当日の結果が揃わなくても、初回面接を分割実施できるように制度を見直しました。

こうした見直しは、初回面談をしやすくさせ、特定保健指導の実施率を向上させるという狙いもあります。

また、積極的支援対象者に対する柔軟な運用による特定保健指導のモデル実施が導入されました。
3か月以上の保健指導により腹囲・体重の値が改善すれば、180ポイントの実施量を満たさなくても特定保健指導とみなすというものです。
また、 積極的支援に2年連続で該当した場合、2年目の状態(腹囲、体重等)が1年目より改善していれば、2年目は動機付け支援相当でも可とするというような見直しもなされました。

また、特定保健指導でもICTの活用が進められます。
具体的には、遠隔による初回面接を認め、3ヶ月経過後のフォローでもICTを活用し、特定保健指導対象者の個別性に応じたフォローを可能にします。
ICTを活用することで、保険者の業務効率化が図られると同時に特定保健指導対象者にとっても、業務に追われるなかで指導を受ける負担が軽減され、指導を受ける時間がより柔軟に選択できるなどのメリットがあります。
こうしたICTのメリットは、特定保健指導の実施率向上にも寄与するものと期待できます。

保健指導対象者の生活改善を促す方法

特定健診・特定保健指導で重要なポイントは、保健指導対象者の生活習慣が改善されることです。
それには、的確な初回面接が重要になりますが、具体的にはどのような点を踏まえ指導するのでしょうか。

これを知るためには、近年の肥満の傾向を知ることが大切です。
肥満というと、「食べ過ぎ」という印象があります。
しかし、近年の肥満では、摂取カロリーよりもエネルギーの消費量が少ないことも原因とみられています
。厚生労働省の国民健康・栄養調査の結果などをみても、摂取カロリーは1991年から2009年までの20年間で約3分の1に減少しています。

特に最近は、ダイエットのためにカロリー制限を行う人が増えています。ところが、基礎代謝量よりも摂取カロリーが下回ってしまうと、エネルギー不足を招き、ダイエットにとっても悪影響になってしまうことがあります。

厚生労働省によると働く世代(30~49歳)の男性の平均的な1日あたりの基礎代謝量は1,520kcal、女性で1,140kcalとなっています。こうした基礎代謝量を下回るような過度のカロリー摂取制限によるダイエットが行われている場合は注意が必要となります。
参考:厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト

食事面ではカロリー摂取にばかり視点を向けずに、正しい栄養摂取と日中の活動や運動によるエネルギー消費量とのバランスが重要になります。
基礎代謝を落とすことのないよう、食事からしっかり栄養を摂ることが大切なのです。
また、寝る直前の飲食など不規則な食習慣を改め、生活と食事のリズムを改善することも有効です。

企業としては、社員の生活改善のために、保健師や産業医と協力して、指導できる体制を整えることが求められます。
また、特定保健指導のプロを招集できない場合は、ICTの活用も有力です。

愛媛県(地方職員共済組合愛媛県支部)は、職員を対象に2017年2月にスマートフォンで特定保健指導が可能となる「Noomコーチ」というITツールを導入しました。
特定保健指導の初回面談は、スマートフォンのビデオ会議で行え、その後の指導もアプリのメッセージ機能などを通じて行えるというものです。
さらにスマートフォンのアプリで収集した歩数や消費カロリー、体重などのデータを統合した分析をもとにした指導も可能です。
最近では、ほかにも生活習慣改善を促すツールやソリューションが次々と登場しており、今後企業でも導入が進むことが期待されます。

第3期の変更点を理解して従業員の特定健診・特定保健指導の実施率を高める

ここまで、特定健診・特定保健指導の第3期の変更点を中心に、受診者に対する働きかけの方法を見てきました。
特定健診・特定保健指導はメタボリックシンドローム対策として、より重要性が増すでしょう。それに応じる対策は企業にも求められるでしょう。

健保や企業は受診者に対して、生活習慣を改善できるように積極的に働きかける必要があります。
「健康経営」という言葉が生まれ、従業員の健康管理は企業の役割の一つになり、実現できている企業は社会から評価される状況となってきました。
この10年で大きく変化した企業の評価事柄の一つといえるかもしれません。

生活習慣の改善はプロの仕事である一方で、先ほどお伝えしたとおりICT技術を活用したツールやソリューションも数多く誕生しており、保健指導対象者の個別性に合わせて、ツールもパーソナライズが行えるものや、生活習慣改善のプロが監修したソリューションも出てきています。
健康経営の実現に向けて、導入を視野に入れておくことをおすすめいたします。

編集部

ヘルスケア通信の編集部

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