健康経営

2018/03/23

データヘルス計画とは?従業員の健康増進へ向けた企業の活動と事例

データヘルス計画は厚生労働省から健康保険組合に義務付けられた、健康事業に関する施策のひとつです。この記事では、データヘルス計画の背景や、保健事業の効果的な運用が社会や企業にとってもたらすメリットなどについて、活動事例とともにご紹介します

データヘルス計画は厚生労働省から健康保険組合に義務付けられた、健康事業に関する施策のひとつです。

そのなかでは、健康保険組合などの保険者と、従業員及びその家族を被保険者・被扶養者として健康保険に加入する事業主(企業)との協働=「コラボヘルス」が重要な役割を果たすものとして位置付けられています。企業としては、データヘルス計画におけるコラボヘルスを有効に実施するために、その目的と必要性を十分に理解したうえで取り組むことが重要です。

この記事では、データヘルス計画の背景や、保健事業の効果的な運用が社会や企業にとってもたらすメリットなどについて、活動事例とともにご紹介します。

データヘルス計画が取り組まれるようになった理由

データヘルス計画とは?

データヘルス計画とは、健康保険組合が保有するレセプト(診療報酬明細書)や特定健診(特定健康診査)から得られる情報を活用し、データ解析に基づいて保健事業を効率的に実施するための事業計画です。

国民の疾病予防や健康増進、病気の重症化予防を目指す保健事業の取り組みが進むなか、平成25年に閣議決定された成長戦略「日本再興戦略」において、すべての健康保険組合に対して、データヘルス計画の作成・公表、事業実施、評価などの取り組みが求められることとなり、平成27年度から厚生労働省の指針に従って第1期データヘルス計画がスタート、すべての健康保険組合に取り組みが義務化されました。

さらに平成30年度からは、いよいよ第2期データヘルス計画が始まります。第2期データヘルス計画では第1期で得られた知見や課題を踏まえ、より質の高い6カ年計画を策定し、PDCAサイクルによって保健事業の実効性を高めることが求められています。

なぜデータヘルス計画が必要なのか?

データヘルス計画の狙いは、保健事業をこれまでの延長線上で実施するのではなく、データを活用して効果的・効率的にアプローチすることで事業の実効性を高めることにあります。
そして、このデータヘルス計画の策定には次のような背景があります。

1. データヘルス計画が必要とされる背景:労働力の高齢化
我が国では総人口に占める65歳以上の割合が年々増加しており、これにともなって職場における平均年齢も上昇を続けています。生活習慣病の発症や重症化においても加齢の影響は大きく、高齢化にともなって職場の健康リスクは上昇します。
従業員(およびその家族)が病気になるなどの健康リスクが高くなるほど労働生産性の低下につながり、その結果、社会全体の生産性の低下や医療費の増加が進むという構造は、我が国の将来へ向けての大きな課題となっています。
そのため、従業員の健康づくりは企業にとっての重要な経営課題でもあり、同時に社会にとっても人々の健康増進と医療費適正化のための解決策として重要な事業と位置付けられるのです。

2. データヘルス計画が実施しやすくなった背景:インフラ整備の進展
一方で、データヘルス計画の前提として、事業推進の基盤となるインフラ整備の進展により保健事業におけるPDCAサイクルの効果的かつ効率的な実施がしやすくなったという状況が挙げられます。 PDCA サイクルとは、Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)という4つの段階を繰り返すことによって、業務を継続的に改善する管理手法のことをいいます。
医療保険事務の効率化を目的に進んできたレセプトの電子化に加え、健診データの電子的標準化が実現したことで、健康状況や受診状況・医療費状況などの健康情報を電子データとして蓄積・分析することが可能となりました。これはデータを分析・活用するうえで大きな利点となり、PDCAサイクルを実施しやすい環境を整えることとなりました。

3. その他の施策との連携
厚生労働省が平成20年度に開始した「特定健診・特定保健指導」は、健診データを電子的に標準化し、データに基づいた保健事業の展開を可能にしました。
また、特定健診制度は保険者に課せられた法的義務でもあるため、「特定保健診査等実施計画」では、保健事業の中核をなす特定健診・特定保健指導の具体的な実施方法が定められています。したがって、健康保険組合が保健事業を効果的かつ効率的に実施するためには、データヘルス計画と特定保健診査等実施計画の連携のもと、一体化して計画を策定することが望ましいとされています。

企業がデータヘルス計画で協働するメリット

健康保険組合がデータヘルス計画に基づいて保健事業を効果的に実施するためには、事業主、地方自治体、健診機関、企業、学術機関などが、それぞれの立場・役割のもとで連携し、協働していくことが重要とされています。

このような協働は「コラボヘルス」と呼ばれ、特に健康保険組合などの保険者と企業が積極的に協力し合い、労働者やその家族の健康増進を効果的・効率的に行うことは、さまざまな保健事業を実施するうえで不可欠となっています。

従業員の健康と安全を守ることは労働安全衛生法に定められた事業主の責任でもありますが、企業側からみても、健康保険組合との協働による従業員の健康づくりの活動は、医療費の適正化や従業員の健康増進による生産性の向上、病気などによる離職者の低減につながり、健康経営の視点からもメリットがあります。

また、事業主の立場からではなく、企業が自社の事業を通して保健事業に協働するという可能性もあるでしょう。自社の製品やサービスを通じて日常生活の中に健康情報を提供することによって、消費者の健康への意識を高める効果が考えられます。

たとえば、自治体などと連携して検診のPRリーフレットを顧客に配布したり、消費者健康プログラムの参加者へ自社製品のクーポンを提供するなどといった企業の取り組みもみられるようになりました。

このように保健事業への参画は、自社の製品やサービスに消費者の目を向けさせる効果が期待できるほか、「健康にかかわる活動を推進している企業」というイメージアップにつながる可能性もあり、企業の評価においてプラス材料となることが期待できます。

データヘルス計画の取り組み内容と事例

PDCAサイクルに基づく取り組み

PLAN(計画):データ分析による従業員の健康状態の把握と課題に応じた事業の計画

・データを分析して、従業員の健康課題を明確にします
・課題に適した保健事業を選択します
・取り組みの目標と評価の指標を設定します
(長期の指標だけでなく、短期で効果を測ることができる指標も設定するようにします)
・第2期データヘルス計画では第1期の取り組みを見直して活用します

企業内で取り組むのが難しい場合は外部の機関を活用することも考えられますが、その場合には、個人情報の取り扱いについて注意が必要です。
遵守すべき法令やガイドラインを確認しておきましょう。

DO(実施):計画に基づいた事業の実施

・保険加入者へ情報を提供します
・健診や保健指導を実施します
・疾患の重症化を予防するような内容を取り入れます

費用対効果の観点から、一部の高リスク者だけでなく、加入者全体にわたって効率的に実施することが重要です。

CHECK(評価):データ分析をもとにした効果測定、設定した評価指標を用いた評価の実施

・評価が難しい場合は、その原因も確認します
・評価したうえで、達成の成否についてその要因を探ります

ACT(改善):次のPDCAサイクルに向けての改善

・評価の結果に基づき、事業の構成が健康課題の解決に適していたかを確認します
・それぞれの事業について、目標、評価指標、対象・方法などを見直します

企業の事例

事業主が健康保険組合と協働して進めた保険事業の事例として、オムロン株式会社とオムロン健康保険組合の協働のケースをご紹介します。
データヘルス計画の中でオムロン健康保険組合が抽出した健康課題には、以下のようなものがありました。

・高齢者医療費の割合が年々増加している
・生活習慣病のリスクを抱える人が増加し続けている
・肥満の人の医療費が高い
・人間ドックの受診率が低迷し、がんにかかる年齢が若年化している

これらに対し、事業主であるオムロン株式会社とのコラボヘルス(協働)によって、次のような取り組みや今後の指針が計画されました。

・オムロンが実施しているオムウォーク事業と健診・医療情報を突き合わせて分析することで、効果の検証や事業の活性化検討を実施する
・定期検診時にがん検診項目を追加して、社員が容易に検診を受けられるようにした→その結果、検診受診率が大幅にアップした
今後は女性特有がん検診の実施や人間ドックの運用方法についても検討する

コラボヘルスをきっかけに始める健康経営への取り組み

多くの企業において、健康経営、健康投資という考えがあることは、すでに認識されていることでしょう。しかし、その重要性が理解され、経営陣に浸透しているかというと、必ずしも十分ではないようです。

「専任の担当者がいない」「何をしてよいかわからない」などの理由から、単に法的に義務化された制度を実施するだけにとどまってしまい、健康保険組合からの情報を橋渡ししたり、要請された場合にのみ協力に応じるといった、受け身のスタンスでの活動だけになってしまう場合も多いのではないでしょうか。

そのような状況で、データヘルス計画における健康保険組合とのコラボヘルスは、企業と健康保険組合との相互協力を推進するひとつのチャンスととらえることができます。これをきっかけに、健康保険組合やその他の機関との協働を通じて、自社内の健康増進活動への新しい取り組みを本格的に始めてみてはいかがでしょうか。

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この記事の監修

尾形 裕也

九州大学名誉教授

東京大学工学部・経済学部卒業。1978年厚生省に入省、在ジュネーヴ国際機関日本政府代表部一等書記官などを務める。2001年より九州大学大学院医学研究院医療経営・管理学講座教授。2013年より2017まで東京大学 政策ビジョン研究センター健康経営研究ユニット 特任教授。2013年より九州大学名誉教授。

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