健康経営

2018/01/29

THP(トータル・ヘルスプロモーション・プラン)とは?「健康経営」とは違うの?

≪産業医監修≫昨今注目を集めている「健康経営」の考え方は以前からありました。それが「THP(トータル・ヘルスプロモーション・プラン)」です。この記事では、そんなTHPの基本的な考え方や、導入方法などを詳しく解説します。

昨今注目を集めている「健康経営」の考え方は以前からありました。それが「THP(トータル・ヘルスプロモーション・プラン)」です。
この記事では、そんなTHPの基本的な考え方や、導入方法などを詳しく解説します。
「健康経営」を推進していこうとしている企業の方も、「THP(トータル・ヘルスプロモーション・プラン)」の考え方について振り返ってみてみましょう。

従業員の健康を守るTHPとは?

THPとは

THPとは「Total Health promotion Plan(トータル・ヘルスプロモーション・プラン)」の略称です。 働く人すべてを対象にした「心とからだの健康づくり運動」のことで、厚生労働省が策定した指針に沿って行われます。
1979年より中高年の労働者を対象に推し進められていたSHP(シルバー・ヘルス・プラン)をさらに発展させた取り組みです。

1988年に労働安全衛生法が改正されたことでTHPは事業者の努力義務となっており、第69条で以下のように記載されています。
「第六十九条 事業者は、労働者に対する健康教育及び健康相談その他労働者の健康の保持増進を図るため必要な措置を継続的かつ計画的に講ずるように努めなければならない。労働者は、前項の事業者が講ずる措置を利用して、その健康の保持増進に努めるものとする。」
※引用:労働安全衛生法 第七章 健康の保持増進のための措置(第六十四条-第七十一条)

THPが重視されてきた背景

従業員の健康は企業にとっての資産です。THPが重視されるようになった背景には、主に3つの傾向が挙げられます。

・労働者の高年齢化に伴い、定期健康診断で所見の見つかる人が多くなっていること
・業務の複雑化や人員不足などから、仕事にストレスを感じる人が増加していること
・運動不足や偏った食事で生活習慣病になる人が増えていること

労働者がストレスを感じたり、病気になったりする要因には、本人の努力だけでは取り除けないものもあります。こうした背景から、従業員の健康を維持するために、本人だけではなく、企業側の健康管理も重要視されるようになりました。
具体的には、事業者が従業員の健康を守り、増進することで、病気を未然に防ぐ「一次予防」に重点が置かれています。

THPのサイクル

実際にTHPに取り組む際は、どのように進めていけば良いのでしょうか。4つのステップに分けて見ていきましょう。

ステップ1.計画の策定

THPを進めていくためには、まず「健康保持増進計画」を策定します。事業者がTHPを推進することを表明し、目標を設定した上で、計画を遂行するための体制の整備や活動内容について検討します。
健康保持増進計画の活動状況によっては計画を再考することもあります。

ステップ2.健康測定

健康測定では、生活状況の調査や医学的検査、運動機能検査を行います。
生活状況の調査では食生活や運動の習慣をチェックし、医学的検査では尿検査や血液検査などを実施します。運動機能検査では、筋力、筋持久力、柔軟性、敏しょう性、平衡性、全身持久性の6項目をチェックします。

ステップ3.健康指導

産業医が作成した指導票と健康測定の結果をもとに、従業員に具体的なアドバイスを行います。従業員によって必要な指導は異なり、本人が無理なく取り組める内容であることが大切です。

<指導内容の例>
・運動プログラムの作成、運動指導
・ストレス対処法を軸とするメンタルヘルスケア
・食生活や食行動の評価、改善も踏まえた栄養指導
・睡眠や喫煙、飲酒といった生活習慣を見直す指導

こうした指導は、事業所内のTHPスタッフによって行われるのが一般的です。本来は産業医をリーダーとした委員会を設置するのが望ましいものの、事業所内で設置が難しい場合は、外部のサービス機関に委託することも可能です。
中央労働災害防止協会では、委託可能な労働者健康保持増進サービス機関・指導機関の名簿を公表しています。

※参考:中央労働災害防止協会「都道府県別労働者健康保持増進サービス機関・指導機関名簿」

ステップ4.実践活動

健康指導で受けたアドバイスをもとに、従業員は健康づくりのための活動を実践します。事業者は労働者に活動を実践するよう促すことが大切です。
また、活動の内容によっては集団で取り組めるものもあります。例えば社内でウォーキングイベントを行うなど、集団で取り組めるようにすると、従業員同士で楽しみながら実践できるでしょう。
労働者が実践した効果が出ているか確認し、必要に応じて活動プログラムを改良することもあります。

企業でTHPをうまく推進するために

THPを円滑に推進するために押さえておきたいポイントをチェックしましょう。

THP指導者を設置する

企業でTHPをうまく推進するためには、健康指導を行える「THP指導者」が社内にいると効率が良くなるでしょう。
THP指導者になるには、中央労働災害防止協会の研修を修了し、中央労働災害防止協会に申請を行う必要があります。研修には6種類あり、修了した研修によって異なるTHPスタッフの名称で登録されます。

<研修の種類(THPスタッフの名称)>
・健康測定専門研修(健康測定研修修了医師)
・運動指導専門研修(ヘルスケア・トレーナー)
・運動実践専門研修(ヘルスケア・リーダー)
・心理相談専門研修(心理相談員)
・産業栄養指導専門研修(産業栄養指導者)
・産業保険指導専門研修(産業保健指導者)

THP指導者の登録は3年間有効で、更新する際にはレベルアップ研修などを受講して単位を取得する必要があります。

関連セミナーを受けさせる

中央労働災害防止協会などで開催されているセミナーを関係する従業員に受講してもらい、THPに関する知見を深めさせるのも良いでしょう。
中央労働災害防止協会で受講可能なセミナーには、職場の健康づくりや産業保健活動、職場での心理相談・教育、メンタルヘルス対策などのテーマがあります。産業医、保健師・看護師といった産業保健スタッフだけでなく、人事や労務、総務担当者向けのセミナーも開催されています。

他企業の事例に学ぶ

THPの計画を策定するにあたり、他社の事例を参考にするのも良いでしょう。ここでは2つの例をご紹介します。

健康保持増進サービス機関を利用し、THPの取り組みを始めた企業

機械器具製造業のある企業では、年に一度の健康測定後、保健指導や運動指導、栄養指導を実施し、希望者とストレス度の高い従業員には心理相談を行うようにしたところ、6年間で疾病休業日数率が減少。約2%から約0.9%まで下がっています。

社内にTHP推進委員会を設置した企業

機械部品製造業のある企業では、定期健康診断や体力測定などの結果をもとに、健康教室やウォークラリーを実施しています。また、事業場にエアロバイクなどの機器を整備し、体力づくりの支援を行ったところ、従業員に運動習慣が定着。結果、従業員の欠勤日数が減少しただけでなく、医療費の減少も見られました。

事例からもわかるように、THPの計画的な取り組みにより従業員の健康が増進されると、休業日数や欠勤の削減といった効果が得られます。
自社の課題を踏まえ、活動内容を決めていきましょう。

THPで従業員の心も体も健康に

国内企業の多くでは労働者の年齢が上がっていることもあり、従業員それぞれが長く健康に働けるような取り組みが、本人だけでなく企業にも求められています。 従業員の心と体に健康をもたらすことは、一人一人が持てる力を存分に発揮するのに役立ちます。また、企業によっては医療費の削減や休業日の減少といった効果も得られるでしょう。 THPの考え方は「健康経営」につながるものであり、企業にとって従業員の健康と働きやすさを守るうえで重要なものです。以前と比べ「健康経営」推進するためのサービスや各種ツール等が充実してきており、取り組みやすくなっています。

この記事の監修

西本 真証

医師
ヘルス・アンド・カンパニー株式会社 代表取締役
センクサス産業医事務所 パートナー

産業医科大学 医学部医学科卒業。産業医実務研修センター、新日鐵住金(株)専属産業医、(株)三越伊勢丹ホールディングス統括産業医を経て現職。
専門は、産業医学、メンタルヘルス、健康経営。日本産業衛生学会 産業衛生専門医、社会医学系 専門医・指導医。現在、複数の日系企業や外資系企業の産業医、コンサルティングを行っている。

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