健康経営

2017/12/14

健康管理とは?会社が健康経営を行う目的と義務、具体的な方法について

≪産業医監修≫企業にとって今、なぜ従業員の健康管理が必要なのでしょうか?健康管理が必要とされる社会的な背景や、最近の企業を取り巻く環境、制度等をふまえ、組織内で健康管理を効果的に進める上で重要なこと、意識すると効果的なポイント等についてみていきたいと思います。

企業にとって今、なぜ従業員の健康管理が必要なのでしょうか?

今回は、健康管理が必要とされる社会的な背景や、最近の企業を取り巻く環境、制度等をふまえ、組織内で健康管理を効果的に進める上で重要なこと、意識すると効果的なポイント等についてみていきたいと思います。

また、どのような企業には特に健康管理が必要なのか、無理なく継続的に進められる効果的な施策のヒントについて、具体的な事例等もみながら確認してみましょう。

健康管理って何?

健康管理とは?

そもそも企業における健康管理を考える前に、健康管理の定義について考えてみましょう。
健康とは、 病気でない・弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態 にあることをいいます。もし、体調に変化があれば、個人の判断のもと、病院等に行き、適切な処置をうけます。

では、企業においては従業員の健康管理は必要ないのでしょうか?個人の対応だけに任せておいていいのでしょうか?

企業活動において、従業員の生産性は、当然企業利益に影響します。 健康管理ができない人が組織の中に相当数いた場合、組織のパフォーマンスは著しく低下 します。健康管理が企業としてもしっかりできていないと、従業員が働くこと自体も難しくもなります。

このことから、きちんとした仕組み・健康管理ができるよう、企業側も従業員の健康状態を維持・向上させる環境を配慮する必要があります

従業員の健康管理が重要な背景

健康管理の重要性

健康管理の重要性については企業側としても十分理解し、進めていく必要があります。

健康は従業員個人の問題ではなく、企業の利益にもつながる要素 でもあることから、最大限の投資を行うべきです。従業員が病気だと組織としての生産性の低下だけでなく、企業イメージの低下、業績の低下等にも直結するといっても過言ではありません。

健康管理を導入するメリットは、社員自身の働くモチベーション上昇にも繋がってきます。一定のモチベーションが保たれ、従業員一人一人が活き活きと働ける環境が、企業の労働生産性の向上、業績の向上、イメージアップにも直結します。さらに働きがいのある組織風土が定着することで、離職率の低下や、優秀な人材確保等にも貢献します。

健康管理が提唱されたきっかけ

国としても経済産業省が アクションプラン2015 を掲げ、企業健康組合に健康経営を促す施策や、年々取組みを強化しています。 健康経営銘柄 (東京証券取引所の上場会社の中から健康経営に優れた企業を選定し、長期的な視点からの企業価値の向上を重視する投資家にとって魅力的な企業として紹介することを通し、健康経営の取組みを促す)の創設や、 健康経営優良法人ホワイト500(日本健康会議と共同で上場企業に限らず、保険者と連携して優良な健康経営を実践している大規模法人を認定する制度)の設置など、企業経営者が、健康経営を意識させるような土壌作りを進めています。

また、厚生労働省は、企業や自治体を表彰する健康経営を促進するような取組みを打ち出しています。

こういった背景をビジネスチャンスとしてとらえる企業も年々増えつつあります。スマホの普及に伴い、健康管理アプリなども急成長中の分野であり、各社様々なサービスを展開しています。

市場で提供されているサービスは、大きく「ポピュレーションアプローチ型」と「ハイリスクアプローチ型」に大別されます。

・ポピュレーションアプローチ型 集団全体へアプローチし、全体としてリスクを下げて行く方法 ・ハイリスクアプローチ型 疾患を発生しやすい高いリスクを持った人を対象に絞り込んで対応していく方法

ポピュレーションアプローチとは、集団全体へアプローチし、全体としてリスクを下げて行こうという考え方です。一方、ハイリスクアプローチは疾患を発生しやすい高いリスクを持った人を対象に絞り込んで対応していく方法となります。

ポピュレーションアプローチは、近年、企業としても様々な取り組みを進めており、従業員が歩くことや健康に関心を向けてくれるような仕組みを取り入れています。サービスも単に歩数を計測するだけでなく、継続性や使い手側の楽しさを意識し、ゲーム性を持たせる仕掛けが多くなってきています。組織別の傾向分析・集計を行うだけでなく、副賞の設定や、モチベーション維持向上に繋がるようなインセンティブ(ポイント連携)制度とセットで展開しているケースが多いようです。

※参考:経済産業省「企業の『健康経営』ガイドブック~連携・協働による健康づくりのススメ~」

健康管理に関する法律

健康管理について定めている法律の紹介

健康管理について定めている法律について触れておきたいと思います。
平成20年3月1日から施行された労働契約法第5条(使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする)では、労働契約における雇用者の安全配慮義務が明文化されました。

労働安全衛生法をはじめとする労働安全衛生関係法令においては、事業主の講ずべき具体的な措置等も規定されています。保護だけでなく、企業側が積極的に快適な職場環境を形成することが必要となっていますが、安全配慮義務を怠った企業には多額の損害賠償を命ずる判例も存在しています。

健康管理が必要な企業とは?

健康管理の仕組みが必要な企業の条件とはどういったものでしょうか?

危険作業を伴う業態、つまり重大な労働災害へ繋がる可能性のある現場では、安全が最優先に取り組まれており、その根底には健康管理も必須であるとされています。特に製造業等や運輸、交通業界は従業員の健康そのものが、企業の生産性等に直結しえることから精力的に取り組まれている事例が多い状況です。

できる限り効率的かつ確実性の高い健康管理に向け、IT環境を活用できることも重要になります。具体的な取組み・施策は企業ごとに様々ですが、定期健康診断の実施や、メンタルヘルス相談用窓口の設置等は国の施策・制度等も後押しし、どの企業にも共通的に義務化されています。

より自分ごととして健康に向き合ってもらうために、自社で健康管理セミナーの開催や、社内運動サークルの参加及び設置の促進にも取り組まれている企業も多いようです。

健康管理の具体的な取り組み

健康管理は誰がやる?

企業において「健康管理」はどのように進められるのでしょうか?先に述べたように当然従業員自身が日々自己管理し、体調に変化があった場合は、まっさきに病院等に行くというのが理想となりますが、社員の健康管理に関わる人物として産業医の存在があげられます。

役割としては健康診断及び面接指導等(法第66条の8第1項に規定する面接指導及び法第66条の9に規定する必要な措置をいう)の実施や、上記に基づく労働者の健康を保持するための措置(作業環境の維持管理、作業管理、労働者の健康管理等)がありますが、それ以外にも健康教育や、健康相談その他労働者の健康の保持増進を図るための措置、衛生教育、労働者の健康障害の原因の調査及び再発防止のための措置も行っています。

毎月1回職場を巡視し、従業員の健康課題に対して対策・アドバイス等を講じています。

人事・労務担当者は主な役割として、安全衛生推進など組織内の総括安全衛生管理者を設置し、総括管理する業務をフォローする役割等も担っています。

実際に行われている取り組み

従業員向けにストレスチェックの実施(従業員50人以上の事業所に対し全従業員への実施が義務付け)も行っており、職業性ストレス簡易調査票(57項目の質問に4段階で答える)等を行い、労働者が自分のストレス状態を知って早めに対処し、メンタル不調などを予防する取組みを進めている状況です。

健康管理を進める上で重要なポイントは?

担当者がシステムを導入する上で注意するポイントの紹介

担当者が健康管理のシステムを導入する上で注意するポイントについて紹介します。

第一に課題点の洗い出し・スクリーニングが容易であることが重要です。健康診断の受診徹底やストレスチェック、健康情報の取り扱い、メタボ社員と医療費の削減などの施策を展開する上で、膨大なデータを適切に組み合わせ、リスクが高い従業員を素早く抽出できることが必要です。

また、人事情報等との連携もできるとより効果的なアプローチが可能となります。他システムとの連携機能や、人事データの取り込み、勤労データの取り込み機能があることで大幅な業務効率化に繋がります。定期診断情報を一元管理できるか、効率的に異常値を探知し、早めにリスク対応などを展開できるかがポイントになります。

特定保健指導を円滑に進めるために、メタボまたは予備軍に対して、生活習慣の改善などを効果的に進めることが求められます。

女性従業員への配慮も必要

女性従業員への配慮

健康管理の中でも、女性従業員に配慮した取り組みは近年、注目して取り組む企業が増えてきています。

女性従業員に対する配慮や、女性従業員が働きやすい環境を作ることは企業として必須です。様々な取組みがありますが、一日の労働時間を短縮し、週または月間労働時間や日数を短縮するフレックスタイムを設定し、所定外労働させない、給与・待遇に差をつけない等も企業として考慮すべき事項です。

また、女性の管理職比率を一定の割合で引き上げることを積極的に目標と掲げ、推進する企業も増えてきています。
女性が継続勤務しやすい環境整備について、職場復帰支援での期間、復職に対する助成金や補助を付ける、復職支援用eラーニングツールを利用、育児休暇制度(子供が2歳に成長するまで育児休業の取得可、小学校に入るまで、1日の勤務時間を短縮化)等、様々な取り組み事例があり、企業でも積極に採用されている状況です。

健康管理向上と運用に重要なこととは?

健康管理の質の向上に必要なこと

健康管理の質の向上に必要なことは、企業内で働く従業員の自己健康管理能力の向上できる環境等を整備し、理解してもらうことです。従業員は自己責任の下で健康管理を認識し、会社は組織的な健康管理活動を通じ、従業員自身の健康管理能力向上を支援します。

会社として
①会社が快適かつ安心・信頼して働ける職場環境を提供
②活き活きと職務遂行できるように従業員の健康状態に配慮・支援すること
これらが必要な行動となってきます。

将来を見据えた行動が会社主体で戦略的に見据えた健康管理の推進に直結します。

導入・運用・運営の円滑化、効率化に重要なこと

導入・運用・運営の円滑化、効率化に重要なこととして健康管理委員会など意識的に活動する組織を形成することや、からだとこころの健康管理に関する基本方針を固めることが先決です。

企業が基本方針運営プランを作成し、スケジュール・運用プランに則り、ヘルスケアプロジェクトを遂行し、データヘルス計画など、重症化予防への対策を実施する等、企業側と健保側がタッグを組んで施策を効果的に進めることが必要です。

ここまで企業における健康管理とどのように取り組むべきかを述べてきましたが、従業員の健康管理を自社の経営課題として経営陣が深く理解・認識し、具体的な施策・取組み目標を掲げ、従業員のパフォーマンスの維持・向上に繋げていくことが、結果として企業利益の追求に直結するということがわかります。

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この記事の監修

西本 真証

医師
ヘルス・アンド・カンパニー株式会社 代表取締役
センクサス産業医事務所 パートナー

産業医科大学 医学部医学科卒業。産業医実務研修センター、新日鐵住金(株)専属産業医、(株)三越伊勢丹ホールディングス統括産業医を経て現職。
専門は、産業医学、メンタルヘルス、健康経営。日本産業衛生学会 産業衛生専門医、社会医学系 専門医・指導医。現在、複数の日系企業や外資系企業の産業医、コンサルティングを行っている。

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